〜龍と刀〜
記憶(オモイデ)の場所でX
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斬り結ばれる剣劇。
ただ、傷付くのは陽ばかり。
アスラの鎧が白銀の刃を弾き−−正確には弾かれている訳ではなく、火花が散るだけで鎧へのダメージが無いのだ−−、攻撃は全てアスラに主導権を奪われてしまう。
いくら龍化によって強化が施されたと言っても、アスラの能力が上にあっては意味がない。これが戦闘経験の差なのか。
「よそ見は感心出来ませんね……考え事ですか?」
振り切った刃の向こうにアスラの姿は既に無く、真横から聞こえた声、しかし。
「ぐっ、が……!」
陽の体に加えられた一撃は真横ではなく、背後。
骨は嫌な音を鳴らして、体は無残にも地面を転がる。最初の、何も変わらない草原であったらここまでダメージを負う事は無かっただろう。だが今は、その面影はほとんど無く、二人の激しい攻防によって荒れた大地と成り果てていた。
ようやく止まった陽の目に映るのは、悠然と中空を漂うアスラ。
「陽、立てるな?」
「普通は立てるか、って聞くもんじゃないのかよ……まだやれる……」
白銀の言葉に応えるように、泥だらけの体を起こす。ここで負けてしまっては、残して来た皆への示しが付かない。
それだけが心にあり、陽を突き動かす。
「はぁ……はぁっ」
龍化による消耗、傷による消耗。張り詰めた空気による緊張。
それらを無理矢理押し退けるかのごとく、陽は白銀を構えた。
「どうして−−」
「……?」
「−−どうして、あなたはそこまで傷付いてまで諦めないのですか。ここまで私に圧倒的な差を見せられて、何故剣を引かない?」
アスラには分からなかった。
陽が何故、ここまでされているのに戦い続けるのか。
しかし、分かっている事が一つある。これは、心の問題だと。
「そんなの決まってるだろ。あんたが誰かと約束したように、俺はみんなに約束した。守るって。勝手に、だけどな」
この状況下でこんな優しい笑みを浮かべる事が出来るのか、アスラにはどことなく理解した。陽も、自分と同じように胸に深く刻んだ誓いがある事を。だとしたらこれは、信念のぶつけ合い。
「なるほど……それは戦わざるを得ないですね」
「あぁ。退く訳にはいかないんだ。あんたが退かない限り、俺も退かない……」
「まったくもって同じ事を考えていましたよ。似たような盟約を揃っている者同士、派手に戦いましょうか」
先程よりも血の通った、感情が込められた言葉。アスラの心境に何らかの変化があったと見るのが普通だろう。
気のせいかサーベルや鎧にも生気が満ち溢れているような。
「……厄介な相手になりやがったな」
「うむ。戦う理由を改めて思い知ったのだろう」
アスラの強さを再確認した陽。
「こうしていると、あの頃を思い出します……私が彼との盟約を結んだ、あの時を……」
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