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〜龍と刀〜
記憶(オモイデ)の場所でU
小鳥のさえずりすら聞こえる昼間の長閑な草原に響くのは、ぶつかり合う金属音。
火花を散らすその剣劇は見るからにアスラの優勢だ。一つ一つの動作にも無駄がなく、振るう度に草が舞い上がる。

「くっ……この!」

流れるようなサーベルの攻撃を、力押しで無理矢理突破。隙が出来たこの瞬間に、陽は拳を固める。もちろんただの拳では効果が無いので魔力を込めた。
渾身の力でアスラの眼前に迫る拳は、更にその手前で止められる。
驚きに目を開き、そこに存在する物を確認。

「障壁かよ……!」

「陽、来るぞ!」

展開されていた魔法陣に打ち付けた拳が完全に離れる前に、アスラのサーベルが軌跡を引きながら陽を切り裂こうとしていた。
再び響く金属音。上げた左腕には白銀がサーベルを防いでいる。しかし、不安定な動作で受け止めた一撃はあまりにも重く、衝撃がビリビリと骨へ伝わってきた。
直接的では無いにしろダメージを喰らった陽は顔をしかめながら距離を取る。
拳は今の障壁により血だらけになり、運が悪ければ骨もやってしまったかもしれないが、腕は動くし痛みは無い。
即座に自身の状況を把握し、アスラの次にするであろう行動を読もうと思案する。

「あなたでも戦いの流れを読むのですか」

唐突に発せられたのは全く驚いていないような平淡な声。どちらかというと、驚きよりも感心しているようなそんな声だ。

「悪いかよ」

あからさまな挑発とも取れる言葉に、集中力は切らさず耳を傾ける。
不機嫌な態度は表に出しているが。

「いえ、ただ既知の情報とは違った物でして。ただ突進してくるだけで能がない、と」

「誰だよそんな情報流してた野郎は……?」

「……あなたは監視されていたのを知らないのですね」

アスラの呟きは風に溶け、陽には聞き取れなかったが、苛立たせる事を言っていたのは直感した。
だから、動く。

「やっぱり俺のスタイルはこっちだな」

攻撃に重きを置き、相手に付け入る隙は与えないという、オーソドックスな『剣凰流』の戦い方。それを一番の達彦から教わり、それを胸に刻んで戦って来たのだ。今更変えるつもりはないし、変えれる訳がない。

「確かに、この速さには苦戦しそうな同士が居ても納得出来ますね」

全ての攻撃を見せ付けるように紙一重で交わし、体を翻す。
散らばる長い髪と、合わせるように大きく開かれた漆黒の翼が陽の視界を奪う。

「ですが、私のように幾度も死地を潜り抜けて来た者は通用しないでしょう。この程度、子供のお遊戯です」

遮られた視界、その向こうから投げられた侮辱。
この事に怒りを棄てて戦える陽ではない。

「お前が今侮辱したのは俺だけじゃねえぞ……『剣凰流』に所属していた仲間を、その全員を貶したんだ。今の言葉、撤回してもらおうか!」

強く草を踏み、生え揃った草の絨毯を破壊しながらアスラの喉元狙って白銀を突き出した。

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あきゅろす。
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