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〜龍と刀〜
後夜祭!Z
いつの間にか設置されていた特設ステージが様々な色のライトで照らされると、観客のボルテージは最高潮に。

「さあさ、始まりました!スタコン最終ステージ、アンド敗者復活戦!この激戦を勝ち抜いて、王者の証を戴くのは一体誰なのか!?」

司会はどうやらいつもの女子生徒のようだ。
近隣住民の迷惑も省みず、マイク越しに大音声を響かせる。それに釣られて観客の生徒−−中には教師も数名−−が雄叫びにも似た歓声を。

「頑張ってね陽ちゃん。一番前の良い所で応援してるよ!」

「やめてくれ。恥ずかしい」

「全然そんな風には見えないわね。冷静そのもの、って感じよ?」

「……ポーカーフェイスってやつだ」

裏方。というか、張りぼての裏側に集められた出場者一同。外だからかそんなに緊張した雰囲気は感じられないし、それぞれがフレンドリーに会話をしているのを見ると、ほとんどが遊びでやるんじゃないかとも思えてくる。

「それじゃあ私たちは戻りましょうか?あんまりここに居ると、邪魔になりそうだし」

「え?あ、そうだね。また後でね、陽ちゃん」

「おう。しっかり……いや、あまり見つめないでくれよ?ホントに。集中力が切れたら笑えないから」

竹刀を振って、月華と紗姫から別れるとほぼ同時。入れ違いで中島が井上を引き摺って来た。

「結構ボロ雑巾だけど、大丈夫なの?」

「ああ。何とかなる。井上が一歩も動かなければな」

「何!?俺何かされるのかよぉ!痛いのか?それは、痛いのか?」

バタバタと動く井上改め、ボロ雑巾に言い聞かせるように竹刀の先端を向ける。

「良いか?お前は立ってるだけで良いんだ。気をつけして、俺の前にな。そして、そこから動くなよ?」

「……もし、動いたら?」

恐る恐る聞く井上に、陽は少し思案しながら告げた。

「そうだな……掠る程度ならちょっと皮がむけるくらいだろ。当たった場合は……保証しない」

目を背け、遠くを見る。陽の事だから、失敗は無いとは思うが、それでもそんな意味深な事を言われると気になってしまうのも仕方がない。

「一応聞いてみるけど、龍神は失敗するつもりでやるの?」

「善処はするさ。俺は確実に成功を納められるように善処する。井上が動かなきゃ良い話だ」

「本当?動かなきゃ良いだけなのか?それなら俺だって頑張るよ?どこまでなら許されるんだ?」

覚悟を決めたらしい井上は、陽がやろうとしている事へ協力するために立ち上がった。

「前進は何があっても絶対にダメだ。後退は……ま、一歩ぐらいなら妥協してやるぞ」

コクコクと頷く井上。

「良いか?前進だけはするなよ?大事な事だから二回言ったぞ?これは、お前にしか出来ない大役なんだ」

「俺にしか出来ないなら仕方ないな!どんな困難にだって立ち向かってやるぜ!」

「さっすが井上!男だね」

結局最後はおだてる作戦を使用する。最初からやってしまえば良かったのではないか、とも思うが、恐怖する井上を見れたので楽しかった。とは陽の胸中である。

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あきゅろす。
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