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〜龍と刀〜
後夜祭!Y
「さて、そろそろ行くかな」

のろのろと立ち上がり、伸びをする。

「待ち合わせとかしてんの?」

「バカだな井上は。後夜祭と言ったらグラウンドしかないでしょ?」

「そうだぞ井−−バカ」

「言い直す必要あったの!?」

後夜祭と言ってもやる事はほとんど無いのだ。一番のビッグイベントがグラウンドで行われる程度。他の生徒は小さな打ち上げをやったりして騒ぐ。

「あとはスタコンの敗者復活戦だね。グラウンドに名簿が貼られるらしいから僕らも見に行こうかな」

「とりあえず行く場所は一緒みたいだな。それじゃ、動こうぜ」

「……スタコンはもう出ないからな!絶対やらないからな!龍神に殴られてもやらないからな!」

勝手に宣言をしている井上を無視してまずは玄関を目指す事になった。
無駄話をしながら歩いていくと、すぐに玄関へ到着。

「早速人だかりが出来てるね」

「井上、見てこいよ。お前だったらあんな人だかり余裕だろ」

「当たり前だぜ!よーし、龍神の名前があるかを探せば良いんだな?任せろ!」

先程何を宣言したのかもう頭に無いのか、井上は颯爽と人混みの中へと侵入を開始していった。

「あ、陽ちゃん!」

「遅かったじゃない?何回も連絡入れたのに」

元々期待する気は無い井上を遠巻きに眺めていると、先約−−月華と紗姫が人混みを避けるように現れる。

「あー悪い。携帯は家だからな……」

引っ張った当人は気付いていないみたいだが、陽の携帯電話は部屋で待機中である。無理矢理に連れて来られて、準備をする暇が無かったのだ。

「そうそう!陽ちゃんおめでとう!」

「そこはかとなく嫌な予感がするんだが……聞いておこう。何がだ?」

「スタコンの敗者復活戦に決まってるでしょ?それ以外何があるのよ」

「おお。良かったじゃないか龍神」

月華は無邪気に手を叩き、紗姫は呆れたように溜め息を。中島はもみくちゃにされているだろう井上を思い出して笑っている。
陽はと言えば、

「はぁ……やっぱりそうなるのかよ……」

ぐったりと肩を落とす。

「ステージに上がるのよね?何かやるのかしら」

「期待するような目を向けるなっ」

「えぇ、何もやらないの?それはそれでもったいないよ?せっかくなんだから、芸の一つや二つ、ね?」

「……月華は何でそんなに積極的なんだ?」

しかし、と考え込む陽。簡単に芸、と言ってもこの短時間で準備出来るような物はあるだろうか。
井上のように笑いを狙いに行くのは苦手だし、手品なんていう洒落た事が出来る訳でも無い−−魔術なら別だが−−そもそも人前で目立つのが嫌いなのだ。

「ならさ〜。居合いでもやれば良いんじゃないの〜?」

「居合いか……確かにそれなら得意だし、って先輩!?いつからそこに?」

間延びした声が聞こえ、それに驚きつつも振り返る。

「今さっきかな?やるんだったら、竹刀貸すよ〜?」

幸輔は、何故か未だに持っていた竹刀を陽に差し出す。やれ、という事なのだろう。

「分かりました。居合いでやってみます……中島。井上を持って来てくれないか?」

「良いけど……どうするの?」

問い掛けられた陽は意地悪く微笑む。妙案があるみたいだ。

「井上を使って、ちょっとな」

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