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〜龍と刀〜
後夜祭!V
二人で同じ方向に走ってしまうと余計に目立つ、という事で陽は幸輔と別れ、校舎の中へ。
玄関周辺にはほとんど人が歩いていなかった。ここの後片付けはもうとっくに終わっていたのだろう。たまに通るのはゴミ袋を抱えて外に出ようとしている人ぐらいだ。

「静かだな」

その呟きですらこの空間ではある程度の声量となって響く。声が吸収される物が無いからだ。
ふと、手元に握り込んでいた竹刀に目が移る。これも返さなければならないみたいだ。位置的にも、竹刀を持って立っていると注意を受けそうな気がした。どう見ても学校を荒らしに来た不良である。

「……先に部室行って、クラスの方に顔出すか」

自身の下駄箱に向かい、靴を履き替えた。学校が嫌いでも、さすがに土足で入っては行かないようだ。
近くの階段を通り過ぎようとした、そんな時。
上から誰かが駆け下りて来る音が。本来なら素通りしていたはずだったが、聞こえた声がどうも知っているような気がして立ち止まる。

「ん?慌ただしいな……なんかあったか?」

そして、顔を出してしまったのを後悔した。見るべきでは無かった、と。
なぜなら、走っていたのは井上で、その後ろから体格の良い男たち−−陽には男子生徒とは見えなかったらしい−−が怒声を上げて疾走しているのだ。

「た、龍神!!助け、て……!」

「うわっこっち来んなよ」

息も絶え絶えに陽の背中側に隠れた井上。振り解こうとしたが、先に対処するべき問題が見つかったので断念。
日に焼けた肌、高い身長、丸刈りに揃えられた髪、そして何より陽の腕の二倍はありそうな筋肉。正直、なるべくなら関わりたくない人間たちだ。

「お前、何やったんだよ……こんなマフィアみたいな連中に追い回されるなんて」

「うぅ、実は−−」

「マフィアではない!ラグビー部だ!ちなみに部長だからな」

「ひぃぃっ!」

陽の疑問に答えるように、分厚い胸板をドンと叩くのは、目の前に仁王立ちするラグビー部部長。
それに震える井上。本当に何があったのだろうか。

「え?学生、だったのか……」

「それ以外の何に見える!」

「だからさ、マフィアとかそういう類の」

「龍神、それはマズいって……」

井上が肩を叩いて忠告。しかし、時すでに遅し。わなわなと筋肉たちが揺れるのだ。

「少し、我々の怖さを思い知ってもらう必要があるな……」

「そういうのが、原因だと思うんだが?俺の気のせいか?」

「スクラム、やるぞ!」

「「はいっ!」」

威勢の良い掛け声と共に、部員は低姿勢に、それから数秒と掛からず肩と肩、体と体を密着させた塊へと変化。こんなのをまともな人間が喰らったらタダじゃ済まないだろう。

「事情は後で聞かせてもらうからな。良いな井上?」

こくこくと頷いたのを確認し、何故か井上を筋肉の塊に向ける。まるで盾を構えるかのように。

「おい、龍神!?何するの!?」

「まあ見てろよ」

一歩、踏み出した。力強く廊下に爪を立てて銃弾は加速。
それに合わせて陽は井上を持ったまま、硬い背筋に飛び乗った。

「なっ、俺を踏み台−−」

突進を開始したスクラムは、勢い余って壁へと突っ込む。

「さて、逃げるか……くそっ何でまた走らなきゃならないんだよ」

悪態を吐きながらも、陽は階段を駆け上っていくのだった。

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