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〜龍と刀〜
過去Y 発見
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陽はひたすら走っていた。険しい道が続く森の中を。
後ろを振り返ると、先程まで感じていた熱気もほとんど届かない距離まで来ているみたいだ。風に乗せられて届けられるのは焦げた臭い。

「探す、って言われても……どんな人を探せば良いんだろう?」

ふと、足を止め考えてみた。
そういえば何も聞いてなかったような気がする。だが、すぐにある事に気が付く。

「そっか……こんな山奥に人が居る方が珍しいもんね」

自らの生活を思い出してか、そこに行き着いた。なら話は早い。

「耳を澄ませば、人の場所くらいなら……分かる」

耳に体中の全神経を集中させ、感覚を鋭敏に。川のせせらぎ、風、爆発、鳴き声、足音、そして人の呼吸音、微かな寝息だ。

「近い」

目を見開き、その人物が居るであろう方角へと走る。
生い茂る草木を掻き分ける事数分。視界が急に開けた。
まるで切り取られたかのように円を描く木々が囲み、そこには温かな日差しが真っ直ぐに、しかし柔らかに刺さっている。その中心、丸くなって眠っている子供が一人。

「あれかな……?」

周囲に細心の警戒を払い、その空間へと足を踏み入れた。予想通り、温かい。
眠っていたのは可愛らしい少女。すやすやと寝息を立てていて、起こすのもはばかられる気もしたが、そんな事は言ってられない。

「起きて。ここから逃げるんだ」

揺すってみた。しかし、唸る事もなく眠りを続けている。
頬を優しく叩いてみた。ふにふにとした感触が陽の手に当たる。これでも起きない。

「……とりあえず戦闘範囲内から出さなきゃ。この子ぐらいだったら、おんぶしてでも持って行ける、かな?」

細い腕を肩に回し、少女を背負う。案の定、軽いのだが、完全に眠っているせいで全体重がのしかかってくる。それでも持てないほどではない。

「よい、しょっと……煙はあっちからだから、こっちに行けば」

立ち上る煙を見て判断。バランスを崩しながらも何とか歩みを進める陽。
そんな頑張りを邪魔するかのように、難題が現れた。

−−ゴツン。

「……!?」

何も無い場所に額をぶつけてしまう。もう一度通ろうと足を動かしたがやはり同じ結果に。
少女を優しく下ろし、近場の木に預ける。

「これは、結界?……もしかして、罠?」

油断していた訳ではない。“ここ”はそういう空間だったのだ。
外から入る事は出来ても、中から出る事は出来ないという造り。

「結界は壊せるって師匠から聞いた事が……」

最近教わった肉体に魔力を流して強化する事。それは攻撃にも使える、そう習った。
だから陽は右拳を固め、魔力を込める作業に入る。ゆっくりと、拳が熱くなっていくのが感じられた。
そして、

「やあ!」

渾身の正拳突きを結界に見舞う。ビリビリと流れて来る痛み。七歳の力じゃどうにもならないのだろうか。

「くっ……諦めたら、そこで終わりなんだ。そんなのはダメだ!」

二発目を放つ。痛みを堪えて三発目、四発目と続けていく。何としても、自分の力で少女を助け出したい、そう思ったから。

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