〜龍と刀〜
過去X 冷静
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二人の戦闘を遠巻きに見るのは達彦と陽だ。気付かれない位置で突入するタイミングを窺っている。
「相変わらず派手な戦い方だ。これじゃ付け入る隙が無いなぁ」
十六夜の戦い方は単純な剣術ではなく使える物は全て使うという、流派の動きをほぼ無視した独自のものだ。下手に割って入るなら、骨の二、三本は覚悟しなければならない。
「仕方ない。陽、何とかあの裏側に行ってくれるか?人命救助が先決だからね」
「見つけたとして、どうやって運ぶの?」
飛んで来た流れ弾を頭を低くして避ける。斬り伏せる事も容易だが、これも気付かれないためだ。
「それもあったか……じゃあ抱えるでもして戦闘範囲内から外してくれれば良い。頼めるかい?」
「やってみる」
「よーし。頑張るんだよ。ああ悪いけど脇差しは預かるね。運ぶのには邪魔だろうし……」
唯一の護身用の脇差し。これを手放したら陽に自衛する術が無くなってしまう。
「その代わり、コレを」
ポケットから取り出されたのは小さな石ころ。澄んだ青色をした、飴玉のようなそれを陽の手にねじ込む。
「一回限りのお守りさ。なくしちゃダメだからね?」
光る石ころをほんの数秒見つめ、陽は拳を強く握った。そして無言で頷くと同時、炎の合間をかいくぐるように走り出す。
「……任せて良いのか」
ここに来て一言も話さなかった白銀が沈黙を破る。
「大事な弟子を戦わせる訳にもいかないだろ?それに、今の十六夜の前に出したら確実にやられる」
「確かに、素人が出る戦場ではないな。ここはやはり、師がどう動くかが鍵となるか」
「大丈夫。十六夜を止められるのは、今は僕だけだし、陽にはきっと良い出会いになるはずさ」
再びやって来た炎の弾を、立ち上がって両断。右手に白銀、左手に脇差しを携えた達彦。これが彼の戦闘スタイル。二刀使い。
「十六夜、少し周りを見てた方が良いんじゃないかな?」
「……達彦か。何しに来た?これは俺様の戦いだ、邪魔を−−」
「周り、見てって言ってるじゃないか」
いつの間に移動したのか、十六夜の眉間には白銀が突きつけられている。
「少しは冷静さを取り戻したらどうだい。強すぎる炎は自分も焼くよ?」
「貴様はそれだけを言いに来たというのか……?しかしまあ、冷静さを欠いていたというのは否定はしないが」
「ふぅ……だったら、久しぶりに共闘でもしようじゃないか」
白銀を引き、構えを取る。脇差しは逆手、白銀は居合いに。
十六夜は乱れた前髪をザッと掻き上げ、深呼吸。握る木刀に魔力を流し、燃え盛る炎を纏わせる。
「仲間か?人間」
「そう、仲間−−」
「いや、ただのライバルだ。こんなのと仲間だなんて吐き気がする」
懐からタバコを取り出し、たまたま舞っていた火の粉を先に乗せ、点火。紫煙を上げて天に向かう。
「それヒドくないかな……?まぁ良いや。それじゃ、行くよ!」
「俺様に、指図するな!」
タイミングは同時、地面を蹴りつけた。
堕ちた神族に向けて牙を向ける。
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