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〜龍と刀〜
過去W 衝突
遠く、山の向こうから爆発音。まるで狙いすましたかのようなタイミングだ。

「来たかな……距離はかなりある。仲間の存在に気付かせないためにも走って行くのが妥当か。見失わないようについて来てくれ」

スイッチを切り替えた達彦は、音と魔力の反応だけを頼りに十六夜の下へと駆け出した。陽も必死にその背中を追い掛ける。


*****


炎弾による先制攻撃を放った十六夜。手応えはあった。
上る煙の中、相対している敵の有無を確認。

「チッ……やはり一撃での消滅は無理か。貴様、何者だ」

煙は空に向かっていたはずだったが、急に逆再生でもするように吸収されていく。
大きさは人間と同程度。ズタボロの布から投げ出された剥き出しの肢体。そして、膝裏まで届く紫の髪。更に良く目を凝らすと、その全体が淡く光を纏っている。

「誰に、向かって口を利いている……人間?」

カッと見開かれた双眸。放出される威圧という名の風で周りの木々は葉を落とし、隠れていた動物たちでさえ逃げ惑う。
動じないのはただ一人、吹く風を切り裂いた十六夜だけ。

「貴様しか居ないだろうが。貴様が何者なのかはどうでも良い……娘を、月華をどこにやった!?」

勢い良く噴出する炎の奔流を加速機代わりに使用し、謎の人物へと特攻を仕掛けた。

「娘……?あぁ。あの優しすぎる子供か。それなら奥で眠っている−−」

接近した十六夜。全力で振り下ろした木刀を、拳を上げる事だけで相殺。
正確には、何らかの魔術を施している拳だろう。たった一度の接触だけでそこまでを読み取った。

「−−目覚める事は、無いだろう」

その言葉が怒りのボルテージを最高潮にまで引き上げたのだ。

「灼き、殺す……!灰になる事すら許さん!完全に、存在ごと、灼き尽くす!」

「神族を殺すと言うのか、人間は。そんな事、出来る訳が無い」

悠長に構える神族と名乗る人物は、高速で飛来する物体に気付かず、真後ろに吹き飛ばされた。
元居た場所にあるのは足。炎の燃え上がる足だ。

「神族だ?そんな事は関係ねぇな。貴様が犯したのは罪だ。ならもう、神と名乗る事さえおこがましい!」

ダン!と思い切り地面を叩くと、それに合わせて炎が流れる。流れはそのまま神族へ。
本当に神族であるなら、十六夜のやっている事も神への離反。大罪だ。そんな事は分かっている。だが、家族に手を出されて黙って見ていられるほど、十六夜は優しくない。

「ふふふ……そうだな。もうワタシは神族では無いのかもしれないな。私利私欲に走った愚かな……魔族だ。名を月詠と言う」

「月詠……?そりゃ、すげえ魔族じゃねえか。俺様は十六夜。『金鳳流』頭首だ」

「ほう。月に縁があるようだな」

名乗りを終えた二人は衝突する。
舞うのは火の粉と、輝く魔力の破片。

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