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〜龍と刀〜
文化祭一日目!V
「当然の結果だな」

メモ用紙に書かれた数字を見比べ、勝利宣言。
働いた人間と、怠惰な人間の顛末である。

「くっそぅ……せっかく可愛い子たちと話し出来たのに!何だよこの結果は!?散々だぜ!」

「自業自得だろ?約束通り、おごってもらうぞ」

スーツのネクタイを緩め、意地の悪い笑みを浮かべた。
何故制服に着替えないのかというと、この格好でいる事によって宣伝効果が少なからずある、いつどこでスタコン関係者が動いているか分からないので、目立つ格好の方が良いと熱心な女子にまくし立てられたからだ。確かに、この格好で歩いているなら注目は間違いないだろう。

「さて。何から行くか」

気ままに回るのも一興だが、自分の財布を心配する必要がないので、計画を立てながらでも良いのかもしれない。

「まずはお昼にしない?時間的にも丁度良いし」

「そうだな……ぼったくり並みに高い店分かるか?」

「それならオススメが……」

「やめて!俺の彼女(五千円札)が泣いてるよ!」

井上にしては大金だ。粗方、ナンパが成功した時のために使う予定だったのだろう。意図が見え見えである。

「仕方ない……普通に定番の焼きそばとかで我慢してやるよ。ただし五百円以上に限る」

「味にこだわるタイプなんだね龍神は」

火を扱う店は、外に設営されているはずだ。なのでとりあえず中庭辺りを散策していこうと、三人は歩みを進める。

「毎日文化祭だったら良いのにな〜」

「無理。疲れる」

井上の放った言葉はたったの二語で片付けられてしまう。それでもめげずに続けてみた。

「そうか?こうやって色んな女の子が外からやって来るんだぜ?チャンスだらけじゃんかぁ」

「それは休日だからだよ。高校生の都合に合わせてる訳じゃないんだから」

「バカだな」

無意味な抵抗で終わったようだ。
そんな会話を続けている内に、既に中庭に到着。やはりと言うか、食べ物屋が多く並んでいる。しかも、大抵は三年生だ。

「焼きそば焼きそばっと。発見、井上買って来い」

「僕のも頼むよ?紅ショウガ抜きで」

「うぅ分かってるよ!すんませーん!焼きそばを……三つくださいな。ぁ一つ紅ショウガ抜きで!」

不自然な間があったのを見逃さなかった陽と中島。少し覗いてみる事にする。

「なるほど。あれは止まるね……」

中島が眼鏡の位置を直しながらそう呟いた。その三年生は、客引きのためなのだろうか、自分たちよりも目立ち、かつ一部から大々的な支持を得る事になる服装をしている。

「やべえよスク水だよ!それにフリルのエプロンって!俺ずっとここに居て良いわぁ!!」

テンションが急上昇した井上から焼きそばをかっぱらい、箸を割った。荷物はなるべくなら増やしたくない。

「僕は……でもスク水は白に限る……から、でも−−」

こちらは眉間に指を当てながら、自身の概念と格闘を始めていた。
そんな二人を尻目に、陽は一人焼きそばを啜る。

「焼きたてうまいな。ソースの絡み具合がなんとも」

気にならないと言えば嘘になるが、かと言ってあからさまに騒ぎ立てるのも好きじゃない。遠くからさり気なく鑑賞するのが一番安全だと、そう直感した。

「もう一個買って来ようかな!?」

「おい、そろそろ行くぞ?時間がもったいない」

「くっ!せめて写メをぉ!……はっ!裏生徒会(非公式)から買えば良いんだ」

暴走気味の井上と中島を半ば引き摺るように連行し、次の場所へと移動を始めた。

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