〜龍と刀〜
文化祭一日目!T
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今日は待ちに待った文化祭当日だ。
ほとんどの生徒がこの日のために全力を注ぎ、万全の状態で開校を待ち望んでいる。誰も彼もの心が弾んでいるのが、空気だけでも感じられた。
「ついにこの日がやって来ました!はい拍手〜!」
見た目だけはバッチリ決めた井上が音頭をとっている。一応は運営委員であるからだ。
「まあ井上は放っといて……とりあえず役割分担の最終確認をしようと思うんだけど」
「中島!おま、俺がせっかくみんなのテンションを上げようと!」
「え?あぁいらないよそういの。だってもう開校まで十分と無いんだし。テンションなら最大のはずだからね」
「くっ……見せ場を……返せぇ!」
正論に悔しがる井上、無視して仕切る中島。これではどちらが委員なのか忘れられても仕方ない。
「ハァ……接客か。人と話すの苦手なんだよな」
「もう、まだ言ってる。せっかくなんだから楽しまなきゃ損しちゃうよ?」
「お前は裏方だからそんな事言ってられるんだよ……」
黒いスーツに身を包んだ陽は、見違える程にしっかりしている、そんな風に見える。普段の着崩した制服姿からは想像出来ないくらいに。
対する、月華含む裏方部隊は、学校の制服にエプロンというほぼそのままの格好だ。しかも、裏方は簡易なパーテーションで区切られており、一般客の目に触れられる事は滅多に無いだろう。
「陽ちゃんって結構恥ずかしがり屋さんなんだね」
「そんなんじゃねえよ。俺だってやれば出来るはずだからな。注文聞いて、商品を持って行く。それだけだしな」
「大丈夫だ龍神!お前は男子だけに声掛けてれば問題無しさ!」
「うるさい。なんならお前の邪魔でもしてやろうか?」
思い付きで口に出してみた。しかし頭の悪い井上は、それを挑発だと受け取ったらしく、
「良いだろう!俺は龍神に勝負を申し込む!どっちが沢山の客に話し掛けられるかどうかぁ!」
「出たよ……負けたら交代した後、午後全部おごりな」
「言ったな?絶っ対に、負けないぞ!へっへっへ。龍神の財布空っぽにしてやるぜ……!」
どうやら勝つ気で居るらしいので、これは圧倒的な差で勝負を着けてやろうと、そう悪巧みが生まれる。
「始まったね。どっちに賭ける?」
「うーん……話し掛けるだけなら井上の方が有利だよね。バカだから手当たり次第やってそう」
「なら条件を付けて上げれば良いんじゃない?売り上げで勝負とか!」
こちらはこちらで更なる賭けが始まっているみたいだ。
「それ良いな!採用!……でも売り上げってどうやって数えんの?」
「本当にバカか?何のための紙とペンだよ?」
注文を書くための用紙。それを取っておけば特に問題は無い。
「よっしゃ決まりだな。タイムリミットは交代時間まで!」
外で、報せ用の花火がパンパンと音を立てた。開校の合図だ。
窓から見ると、最初は少なく、徐々に入校する人間が増えていく。それを皮切りに校内の至る所で歓声が上がって、揺れているのが分かる。
「さあ、それじゃあ!」
「開店だぜぃ!!」
そう。
こうして楽しい文化祭が幕を上げたのだ。
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