〜龍と刀〜
文化祭前日!U
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−−同時刻、協会の一室。
「今日も、剣凰の代理は居ない訳か」
「ふん……学生など止めてしまえば良い物を」
一つの空席を眺めながら言う老人二人。代理、という制度が嫌いらしく、さっさと別の頭首を立てるべきと睨んでいるのだ。そして、そういう人間が居る事は百も承知である。
『悪いが……聞こえてんだ。こちとら年相応に学校生活を謳歌してる。そっちも年相応に隠居したらどうだ?』
部屋の一角、電話に繋げられたスピーカーから不満の声。挑発にも取れる。
「それについては俺様も同感だな。年寄りはゲートボールでもやってろ。良い老後だなぁ、ご老人方」
タバコを噴かしながら言ったのは、十六夜だ。こちらはこちらで、年寄りが全権を握っているのが気に入らない、との事。密かに世代交代を狙っていたりするのだが、それは胸の内にしまっておく。
「何だと……?金鳳よ、目上の者にどういう口の効き方をしておる?一度、教育が必要か」
「良いだろう。俺様が直々に極上の炎で火葬してやるぞ。ありがたく思うんだな」
一触即発。
今にも手を出しそうな雰囲気を醸し出す十六夜。その手中には、既に木刀の柄が。いつでも振り抜ける体勢だ。
「止めぬか。みっともない」
それを制止したのは、長い白髭を蓄えた協会の長だった。机をコンコン、と叩き気持ちが高ぶった者たちを鎮まらせる。
「血の気が多いのはよろしいとは思うがの?今は会議じゃ。そこら辺はわきまえてくれぬか?」
「申し訳、ありません……」
「チッ……元はといえば剣凰のガキのせいだろうに」
『何の事でしょーねー』
大人しく席に着き、次の言葉を待つ。
それを見届け、髭に覆われた口を開いた。
「コホン……これから皆に話そうと思っていたのは、儂らの方針じゃよ」
「方針、とな?それは年初めに決まったのではなかったか」
「ええ。私たちも聞いていますよ」
ガヤガヤ騒ぎ立てる者たちを尻目に、陽は電話の向こうで、十六夜はその場で首を傾げている。
「何だ方針って……?」
『知らない。初めて聞いた気がする』
「人間社会に支障をきたさないよう迅速かつ慎重に事象を解決する、だ。金鳳、剣凰」
「そういやそんなのあったか。良く覚えてたな御門の爺さん」
御門の爺さんと呼ばれた男性は、白髪混じりの髪を後ろで束ねた姿だ。同じ地方の流派だからか、そこそこ仲も良くやっているみたいだ。
「一つ、追加させてもらうかの。儂ら、協会は−−」
水を打ったかのように静まり返る室内。
そこで発せられたのは、陽にとっても、他の頭首陣にとっても驚きの一言だった。
「−−『永遠の闇』という謎の組織を追跡し、見つけ次第即刻排除する!それが人間社会を守るためでもあり、何より仲間を守るためである。これは決定事項じゃよ」
掲げられた腕は力強く、意志が漲っている。揺るぎない決意だ。
『これで良いのか?いや、でも……』
「何かあったと考えた方が正しいか。ま、俺様は好きにやらせてもらう」
「引っ掛かる物があるが、長の決定なら仕方あるまい。そうだろ剣凰?」
御門がそう言うと同時、陽は通話を切った。
腑に落ちないというのもあったが、会議も終わったので、そろそろ日常に戻ろうと気持ちが働いたのだ。
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