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〜龍と刀〜
優勝候補?
*****


−−翌日。

「ふっふっふ。来たか、龍神!」

いつも通りの時間に家から出て来たはずだったが、教室に着いてみると、まだホームルームが始まるまで二十分ほど空いている。これも、月華と紗姫のせいだ。

「……おう、中島」

「珍しく早いね?そうだ、今日数学の小テストだってさ」

「マジか……朝っぱらから鬱だな」

「あれ?スルーなのか!?」

そして、いつもと同じように井上は居ない存在として扱われる。

「とにかく、コイツを見てくれ!」

井上が叩き出したのは紙の束。右上をホッチキスで留めてある。

「何だよ」

「聞いて驚くなよ?コイツはなぁ−−」

「さっさと終わらせろ」

「いや今真っ先に言うつもりだったんだけど……まあ良いや。今年のスタコン優勝有力者候補表だぜぃ!」

バンバンと机を叩く井上。陽にとっては物凄くうるさいテンションだ。

「へぇ……どこから貰ったの?」

「ん?裏生徒会(非公式)からだぜ」

括弧の中までがその組織の名称らしいが、そんな存在があるとは知らなかった。どうせロクな事はしていないのだろうが。

「それで?そいつらの名前を知ってどうすんだ」

名前を知ったところでどうする事も出来ない訳だ。所詮は井上、そこまで考えていないのかと思っていると、意外にも次の言葉が。

「片っ端からつぶす……!」

握り拳を固め、口の端を吊り上げる。

「そんな事だろうと思ったよ……」

「バカだからな……お前がやるのは勝手だけどな。俺は手伝わないぞ?だるいから」

「な、何でだよー!龍神が居ないとこの、ローラークリーン作戦が……」

「他に良いネーミングは無かったのか?」

ガックリと膝を突き、うなだれる井上。本当にやるつもりだったらしい。ローラークリーン作戦を。

「ふぅん……そうそうたるメンバーだね。運動部のエースはもちろん、女子から人気の高い人は大抵入ってる」

「お前、名前だけで分かるのかよ」

「一応ね。有名人はチェックしてるんだよ?こっちは前年までの優勝者の特徴かな……」

中島は中島で何やら分析している。頭が良い人間は違うな、と感心。

「うん。大体分かった」

人差し指と中指で眼鏡のブリッジを押す。その動作が無駄に格好いい。

「龍神、優勝圏内かも」

「は?どういうこったよ?」

「あれ、俺は?なぁ中島?俺はどうなのさ?」

まるでやる気を感じさせない陽の声。そもそも自分よりも良い人間は山と居るから。

「この資料を見るとね?五年前は三年生、次の年は二年生、一年生って来てるんだ。つまり」

指を折り、分かり易く説明する中島。この部分を聞くだけで言いたい事を理解出来た。

「今年は一年生って事か?」

「そうさ。この情報を見る限りはね……断定は出来ないけど」

「それはそうと何で俺なんだよ?一年だって沢山居るだろうに」

中島から資料を奪い取り、一年生の欄を確認してみる。ザッと見だが、三十人弱。学年でこれなら、学校では百人近く候補が居る事になる。

「直感、かな。実のところ龍神は上の方だと思うけど?」

「冗談はよせよ、中島。このクラスにだって良いのは居るじゃねえか。人間性とか」

本気でそう思っている辺りが陽らしい。最低限、井上よりは上だと思っている。

「そう誉めるなよ〜」

「お前よりは数倍上だろ」

「ヒドっ!」

そんな会話をしていると、担任がやって来た。どうやら話し込んでいたみたいだ。

「井上は早く席に着け」

「あーい」

「全員居るな?それじゃあホームルーム始めるぞ」

どこか浮つき出したクラスの雰囲気。文化祭が近いからだろうか。

「今週から、文化祭の準備期間だ。ウチの学校は準備に時間を掛けるのが通例だから−−」

自分もどこか浮ついていたのだろうか、珍しく眠気が襲って来る事はなかったという。

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あきゅろす。
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