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〜龍と刀〜
来るべき日に向け
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「止まれ!お前がこの街に魔物を放った本人だな?」

背後から掛けられた声に反応し、すぐさま呼び掛けて来た相手を確認する。

「何だ……アンタ、誰よ?」

肩に担いだ、身の丈程もありそうな金属の棒が不気味に黒く輝く。その先に取り付けられている鎖をチャラチャラと指で遊ばせながら少年は聞いた。

「私は協会所属の−−」

「ああ、やっぱ良いや……アイツじゃないなら用は無いし。だろ?」

「ハッ、良く分かってるじゃねえか坊主?オレは空腹だ、さっさと喰わせろよ」

スーツ姿の男の言葉を遮り、少年は続ける。

「まあそう慌てなさんな。俺にも楽しみってもんがあってだな?」

自らの肩、金属の棒−−巨大な漆黒の鎌に向かって強烈な笑みを見せ付けた少年。
彼の姿は、まだ太陽があるというのにボロボロの黒衣で全身を覆ったという簡素な物でありながらも、その手の鎌と、対照的な白い髪が見る者を圧倒している。

「せいぜい楽しませてくれよ」

鎌を力強く回し、棒の先端を男に向けた。戦闘開始の合図。
対する男は、得物を何も持っていない。魔術師なのだろうか。その割には肉体強化を施しているようにも感じられないが。

「くっ……なんだこの威圧感は……!皆、手伝っ−−」

最後の言葉は少年の耳に入る事は無かった。ボキリ、という不快な音が体から発せられる。不快だと思ったのは、男ただ一人なのかもしれない。何故なら、少年は眉一つ動かそうともしていないからだ。

「弱いな……それでも喰うのか?封牙?」

投げた鎌、封牙を鎖で引き戻す。封牙は無い鼻を鳴らし、

「当然だ。今更、命を摘む事に恐怖を覚えたか」

「それは違うぜ……俺はこんなので腹の足しになるか気になっただけだ」

「フン……雑魚でも魔力の塊だ。足しにならくはない。奴らとやり合うなら、補充はたんまりしておきたいからなぁ!」

封牙は今までの刀という姿を捨てて、新しく鎌として少年と一緒に行動しているみたいだ。
魂を喰らう鎌と、黒衣の少年。まさしく死神と名乗るに相応しい組み合わせ。

「……まだこんな昼間だ。せめて騒ぎにならないように、一瞬で狩ってやる」

気絶した男を見下ろし、封牙を心臓に突き立てる。慣れたくない物に慣れてしまったな、とボソッと呟く少年。
乗り気では無さそうだ。

「心配するな……骨も残らない」

そう言って、封牙の刃を体へと沈み込ませていく。刃は侵入した途端、赤黒く光を放ち、男の魂と肉体を喰らい尽くす。

「……こんな事、そろそろ終わらせたいもんだな。なぁ、龍神?」

死神の少年、飛澤 壊と、妖刀ならぬ妖鎌となった封牙。彼らは秘密裏かつ、大胆に陽と白銀へと近付いていくのだった。

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