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〜龍と刀〜
出し物は……U
−−放課後。
陽は珍しく剣道部の道場に居た。と言っても、自主的に参加した訳ではない。

「……ウチは運動部ですよ?」

部長からの話が終わった頃、陽は趣に挙手。額に手を当てながらだ。

「そうだな」

「ならやる必要なんて無いんじゃ……」

「去年なら、な。今年は幾つかの運動部は出し物をやらなきゃならないと生徒会がしつこく迫って来るんだ」

部長は腕を組み、詳しい内容を語り始める。陽としては早々に帰りたいところだったが、幸輔に止められてしまった。

「こちらとしては願ってもない小遣い稼ぎのチャンスだ。そうだろ皆?」

「部長の言う通り。こっちには龍神に御門、八雲さんが居るからなっ」

部員の一人がビシッと親指を立ててみせる。頼られた三人がどう思っているのかは知らないが。

「紗姫と先輩は良いのかよ」

「私?クラスの方が空いたらね」

紗姫は元よりやる気は無かったらしく、ひらひらと手を振って軽く流し、

「ボクは、お金は命!が座右の銘だからさ〜。別に気にしないし、こんなんで金稼げるんだったら楽勝じゃん?」

幸輔は適当な理由で手伝いを決めているみたいだ。
確かに、この方法なら圧倒的過ぎて金を稼ぐのは簡単だが。

「俺は乗り気にはならねえな。そもそも八百長なんてやりたくない」

部長が考え出したのは、剣道部員との勝負。防具などの貸し出しで金を取り、勝ち上がると貰える賞金が変わるというものだ。最後まで勝ち上がって来た事を見越して、陽や幸輔などを配置する。

「まあ反対なのは別に構わないさ。だがもう生徒会に提出して来たから、余程の事が無い限り変更は無いぞ?」

「そうですか。なら、俺は手伝わないということで。それじゃ」

それだけ言うと、軽やかに立ち上がり、カバンを肩に掛けて外に出てしまった。

「や〜思ってた通りの展開だったね〜」

あっはは、と笑い続ける幸輔。こうなる事は、付き合いが長い幸輔にとっては予想も容易い。陽が嫌いなのは、正々堂々じゃない物事だから。

「分かってたなら誘うなよ御門……悪者扱いされてるみたいで、心が痛む」

「部長って結構、悪人顔だと思うけど?」

「サラリと酷いね八雲さん……」

紗姫の言葉が胸に刺さったのか、部長は頭を抱えて停止してしまった。悪人顔と言われたのがショックだったのだろう。

「んじゃ部長〜?ボクらは先に帰ってるんで〜」

まずは幸輔が退出を宣言。それを皮切りにどんどんと部員が帰って行く。

「そんなに怖いかな、顔……?」

部長は皆が帰った事に気付かない。窓に映った自分の顔を見て溜め息を吐いたが、事態が変わる訳では無かった。

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