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〜龍と刀〜
出し物は……T
「はい、そこ静まれ!」

「お前は沈まれ」

「そのツッコミは文章にしないと伝わらないよー。井上だもん」

教壇に立った井上がバシバシと黒板を叩く。更に言うと、井上は皆から言葉で叩かれている。

「夏休みはもう終わってんだ!次のイベントは文化祭だろぅ!」

「先生ー、井上がうるさいですよー」

「あー、分かってる。こいつに文化祭の役員を任せたのが間違いだったな……だが他に暇なやついなかったし。仕方ないから協力してやれよ」

担任は教室の隅で、窓から外を眺めていた。行事は苦手なタイプなのだろう、時折眠たそうにあくびをする。

「そういう事だ!何も無ければ、俺が−−」

「「「却下で」」」

「まだ何も言ってないよ!?」

陽はそんな光景を見ながら−−自分含み−−非協力的なやつらだな、と感心。陽自身、手伝う気にならない。

「だって井上ってバカだから、どうせメイド喫茶とか言い出すじゃない」

女子の一人の言葉に大半が頷く。それを予想していたのか、井上は人差し指を振るという、正直かっこよくもない行動を取ってからこう言った。

「残念だったな、メイド喫茶じゃあないんだよ〜」

勿体ぶる井上。そろそろ本当に苛つきが感じられるクラス内。さすがは井上だ、皆の怒りを一身に受けている。

「それはな……メイド喫茶の逆!そう、執事喫茶だっ!」

素早く後ろを向き、執事喫茶と書こうとしたのだろう。チョークを持って、すぐに置いた。勢いに任せて書くつもりだったらしい。

「おい待てよバカ。それじゃ男子だけ働くのかよ」

「違う違う。女子にも執事服を着てもらうのさ!」

騒々しくなるクラス。井上のやりたい事が見えて来ない。

「考えてみろよ?最近は女の子同士のカップリングだって存在するんだぜ?」

井上に説得され始める一部男子。確かに、男ばかりが前面に出て来ている喫茶店はあまり好ましくないだろう。

「それに、この学校には……ミスコンならぬミスターコンテスト。略してスタコンがある!ここでアピールしとけば!」

遂に男子の半分以上が堕ちた。井上と同じ意見を持つようになってしまったら手遅れだ。

「スタコンってあれだよね。優勝した人のクラスに来年の文化祭、好きな場所を使えるってやつだっけ?カッコいい人居るかな」

「そうそう。あたし、先輩から聞いたー。写真部が撮って、得票数で決まるんだって」

女子の方は早くも来年に目を向けて話している。この調子だと、井上の提案が通ってしまうのだが、良いのだろうか。

「このクラスの本名は、あの人だよね?月華?」

「あぅ、だったら嬉しい……かな」

「本人は自覚無し、と」

陽の耳にそんな会話も聞こえて来たが、誰の事だか分からなかった。男目線で見るなら野球部の佐藤だな、と勝手に解釈。

「んじゃあ、これで決定だな?中島、代わりにこれ書いてくれ」

「ああ。別に構わないよ……五百円で」

「金取るのか!?」

クラスの出し物が決定した事の騒ぎと、今後の予定について話し合う声。
今年の文化祭は、忙しくなりそうな、そんな予感がした。

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