その他
【サマウォ】侘助への電話
侘助
(俺の名は、陣内侘助。ある決意を胸に、実家の財産の一部を失敬して、アメリカに飛んだ。
全ては、あの人の為。親父が食い潰した財産の倍以上稼いで、手離した山や土地を取り戻す。
そうしたら、きっと喜んでくれる。
この開発中のAIが完成すれば――。
それまでは、絶対に実家に戻らない。連絡も入れないつもりだ。
向こうだって、俺の連絡先を知らない。
今は一切遮断して、集中して取り組まないと……)
トゥルルル……
侘助
「ん、電話か?」
ガチャ
理一
『侘助、久しぶりだね』
侘助
「りっ、理一っ!?」
理一
『ガッハッハ、予想通り驚いてるね』
侘助
「お前、何でこの番号知ってんだよっ?」
理一
『調べました☆ 住所は○○通りの17番地、で間違いないかい?』
侘助
「そこまで調べたのか……?」
理一
『僕を誰だと思ってるんだい。これでも、陸上自衛隊情報将校だよ?』
侘助
(メチャクチャ職権乱用してるじゃねえか……)
理一
『引っ越し祝い、何がいい?』
侘助
「いらねえよっ! じゃあな、切るぞ!」
ガチャンッ
侘助
「まったく、なんだよアイツ……」
トゥルルル……
ガチャ
理香
『もしもし侘助〜?』
侘助
「理香っ? 何でお前まで俺の番号知ってんだよ? ――理一か?」
理香
『そんなこと、どうだっていいでしょ』
侘助
「良くねぇよ。何の為に番号変えて、引っ越しまでしたと思ってんだよ」
理香
『それよりさ〜、アンタ、押入れの奥にあったミシン知らない?』
侘助
「押入れって、どこのだ?」
理香
『みんなの布団しまってる押入れよ。アンタこの前帰ってきた時、布団出すの手伝ったじゃない。そこの下の段の奥に閉まっておいたはずなんだけど、見当たらないのよ』
侘助
「んなもん、あった事自体知らねぇよ。どこか別の場所に閉まったんじゃないか? 万理子さんに訊いてみろよ」
理香
『うん、そうね。母さんに訊いてみるわ』
侘助
「って言うか、俺に電話かけるよりも先にそっちに訊けよ。同居してんだろ」
理香
『はいはい、邪魔して悪かったわね。じゃあね』
ガチャ
侘助
「ったく、何だよあいつら、姉弟そろって……」
トゥルルル……
侘助
「またかよ……。今度はどっちだ?」
ガチャ
侘助
「もしもし、何の用だよ?」
太助
『もしもし侘助くん。太助だけど、久しぶりだね、今電話しても大丈夫?』
侘助
「おいおい、今度は太助さんかよ……。大丈夫だけど、何だよ?」
太助
『実はうちの店に来たお客さんが、プログラムの勉強をしたいって言っててね、マニュアルとか何を薦めたらいいか相談に乗ってほしいんだ』
侘助
「プログラムって何のだ?」
太助
『C言語とかC++だって』
侘助
「ああ、それだったら○○社から出てる××ってのがいいぜ。あと△△とか」
太助
『ふむふむ……。ありがとう、助かったよ。そうだ、炊飯器いる?』
侘助
「はぁ?」
太助
『少し型は古いけど、いいのがあるんだ。白いご飯が恋しいんじゃないかい? 今ならもれなく、お米と変圧器も付けるよ〜♪』
侘助
「…………どうも」
ガチャ
侘助
「すっかり知れ渡っているじゃねえか。俺、何の為に引っ越して番号変えたんだよ……」
トゥルルル……
侘助
「くそっ、いい加減にしろよ……!」
ガチャ
侘助
「もしも……」
邦彦
『イエローオーブって、どこにあるんだっけ?』
侘助
「……なんで今更ドラクエIIIやってんだよ?」
邦彦
『押入れ整理してたら出てきたんだよ、本体とソフト一式が。なぁ教えてくれよ〜。お前自力で見つけたって、自慢してただろ?』
侘助
「そんな昔のこと、覚えてねえよ」
邦彦
『そこを何とか思い出してくれ!』
侘助
「断るっ。お前いい加減にしろ、こっちは夜中の3時だぞ」
邦彦
『ああ、そうだっけ? 悪い悪い、アメリカとこっちじゃ時差があるんだよな』
侘助
「それくらい自覚しとけよ、この脳筋」
邦彦
『ん、ちょっと待てよ……アメリカ? ――思い出したぁっ!!! そうだ、あそこだあそこ! ありがとう、助かったぜ♪』
ガチャ
侘助
「くそっ、目が冴えちまっただろ……」
その後も――、
万理子
『もしもし、侘助〜?』
万助
『元気でやってるかぁ?』
夏希
『わびすけおじさ〜ん!!! キャー、電話つながった〜♪ おじさん元気ぃ?』
克彦
『息子が欲しがってるからさ、メジャーリーグのグッズ、何か送ってくんない?』
頼彦
『今度娘が産まれる予定なんだけどさ、本場のミッキーマウスのぬいぐるみ送ってくんない?』
万作
『本場の無修正エロ本、送ってくんない♪』
侘助
「お〜ま〜え〜らぁぁぁっ!!!(特に最後のエロオヤジぃぃぃぃっ!!!)」
トゥルルル……
侘助
(だぁっ!! 今度は誰だよっ? もう出ねぇぞ、絶対出ないぞ……)
トゥルルル……
トゥルルル……
侘助
(しつけぇな、誰だよ?)
トゥルルル……
トゥルルル……
侘助
(出ない出ない、俺は出ないぞぉ。さっさと留守電に変われ〜……)
トゥルルル……
ガチャ
音声ガイダンス
『ただ今留守にしております。発信音のあとに、メッセージをお話しください。終わりましたら、シャープを押してください』
ピー……
侘助
(……ん? 何で、何も言わねえんだ?)
栄
『――――侘助、』
侘助
(!!! ばあちゃん……っ)
栄
『ちゃんとご飯、食べてるかい?』
侘助
「ばあちゃ……」
ピッ
音声ガイダンス
『メッセージをお預かりしました。ご利用ありがとうございます』
ツーツーツー………
侘助
「切れちまった……」
ピッピッピッ ピッ
音声ガイダンス
『お預かりしているメッセージは、1件、です。メッセージを再生します。○月**日、×時△分』
メッセージ(栄)
『侘助、ちゃんとご飯、食べてるかい?』
音声ガイダンス
『再生が終わりました。もう一度お聞きになる場合は1を、消去するば……』
ピッ
メッセージ(栄)
『侘助、ちゃんとご飯、食べてるかい?』
音声ガイダンス
『再生が終わりました』
ガチャン
侘助
「……飯食ってから、がんばるか」
おわり
【あとがき】
約半年ぶりのサマウォネタが、こんな下らない話ですいません。
テーマは「愛され侘助」、でしょうか?(笑)
誰も侘助のことを恨んでいない・疎ましく思っていない妙な状況ですが、どうか大目に見てください。
あ、一番好きなのは佳主馬くんです。
(2013.04.07)
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