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此処でキスして。(蒼紅)








いつもは決して外されることのない眼帯が、ぱさりと乾いた音を立てて床に落ちた。

その下から現れた瞼は閉じられている。政宗はにや、と口角を吊り上げると、右手の指でゆっくりとそれを押し上げた。
開かれた瞼の下、其処には左と同様の眼球があるはずが、ぽっかりと黒い穴が空いているだけだ。

「…俺が未だホントに餓鬼だった頃、病の所為で目玉が腐って飛び出したことがあったんだ。…それは小十郎に切り落とさせたがな」

伊達政宗と言う男の経歴を、幸村は少なからず知っていた。それを初めて聞いたときはただ吐き気を覚えたが、今は違う。それだけではない。
政宗と出会い、刃を交え、恋仲にまでなって、それを本人の口から聞いた幸村は、ただただ涙が溢れて止まらなくなった。悲しみや怒りや憤りがぐちゃぐちゃに混ざり合った訳の分からない代物が、心臓を潰さんばかりに強く締め付けるのだ。
苦しい、痛い、痛い。
今しがた自分の感じる苦しみなど、彼の感じて来たものに比べればその足元にも及ばないだろう。
だが泣かずにはいられなかった。

「幸村…sorry…泣かないでくれ…」

悲しげに眉を潜め、それでも自分を想ってくれる政宗が愛しくて、愛しくて。幸村は政宗の背に両腕を回し、抱きしめた。涙は未だ止まらなくて、苦笑した政宗も幸村の背に腕を回しそれに応えた。










(空っぽなその隙間を、私の愛で満たしてあげるから。)














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