籠女、籠女
籠の中の鳥は
何時、何時、出やる?
「長曾我部、」
痛いくらい沈黙する部屋の中で、凛とした元就の声が響いた。
ややあってから、低い声がそれに応えた。
「どうした?」
気配はする。
銀髪の鬼は、確かに自分の近くにいるのだが。
元就に、その姿を見ることは叶わなかった。
「外は、どうなっている」
問うと、また沈黙する世界。
苛立ち、立ち上がると、大きな手にそれを阻まれた。
「平気さ、なにもない。平和、そのものだ」
躯が宙に浮いた気がした。
夢の中で空を飛んでいたあの浮遊感だ。
躯の下の、確かな腕の感触を無視すれば、だが。
横抱きされた躯は直ぐに床に降ろされる。やはり駄目か、と諦め半分で躯を横たえると、真新しい畳みの匂いがした。
「長曾我部」
「どうした、元就?」
呼べば応える癖に、肝心なことは、なにも応えない。
「…これは、そなたの所為では、ない。」
両目の上に巻き付けられた包帯に触れながら言うと、元親は苦笑したようだった。
「、知ってるさ。」
遠くから微かに、砲撃の音がした。
戦で視力をなくした元就と、責任を感じて元就を軟禁する元親。
外を気にする元就に、ずっと嘘を吐き続けている元親の話。