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Hello, Say Good Bye
>>03








ケータイも弄れない。
いつもならこんな堅苦しい空間に自ら進んでくなんて事もなかった。
だからこそ、時間の潰し方が分からない。
寛げる空間でもなく、息が詰まりそう。まじで。

優雅に話でもしていればいいのかねー?
話そうにも、両隣のどちらかに話しかけても柚木くんからの大声が飛んでくるのが目に見えてるしなぁ。


考え事に耽りぼうっとしていたらするりと何かが右手に触れた。
その瞬間、肌に広がるのは不快感。

「っ」

一瞬の出来事だったのに、反射で振り払ってしまった。
…多分、聡の悪戯だ。俺の右側だし。この前も変な事言ってたし。
横を睨み付けるように見ると少しだけ聡の口角が上がった。

…俺的には困惑でしかないけど、その仕草がすっげぇイラッとくる。

口パクで「なんで」と聞いてみるも笑うだけ。そりゃもう楽しそうに。



ちらりと俺を一瞥した聡の左腕がごそごそと動く。
また何かしてくんの?どんなつもり?
そんな事をテレパシーみてーに送りたくて睨み付ける。
つか、俺は愁汰の隣だし。絶対、愁汰に今は言えない雰囲気だし。

一人で悶々としていたら今度は太ももが撫ぜられ、驚きに体が跳ね上がる。
なんで今、こんなセクハラみてーなスキンシップしてくんのか分かんねぇ!

しかも、手で払いのけてもそれを続けてくるから熱が顔に集まる。

収まる気配がまるでない。暇つぶしにしちゃ、性質が悪すぎんじゃない?

愁汰にバレたら殺されそう。それ考えたら、血の気が引いた。
愁汰に殺されんのは本来の俺ならある意味本望。
けど、これは意味が違う。や、殺されるっちゃ殺されるだろうけど…!

俺の顔、アニメとかなら真っ赤になったり真っ青になったりしてんじゃねぇかな。

「雅」

「…ッなに、」

いっつも愁汰はタイミングが良い。でも、今は良すぎて逆に悪い。

愁汰が声を発して俺の方を向いたのに手は一向に俺の太ももを撫ぜる。
しかも、だんだんと際どい方にくる。
加えて手つきは淫猥っちゅーの?そんなので俺だけが焦る。



「おい、雅?…気分悪いのか?」

「…ッん、へ!?あ、いや「なんで、そっち向くんだよ。愁汰!!!」」

…遮られた。そりゃーもう盛大な大声で。
副会長は、一瞬でも会長の気を引いた俺が憎いらしい。俺を睨んでくる。
それって、お門違いっていうんじゃねぇのってね。

「あー、なんでもねーから。柚木くんの相手してていいよ?」

俺の言葉を遮った喚き声に腹が立つ。
平常心、平常心、平常心。

「…チッ、分かった。悪いな」

「んーん」

こんなやり取りが行われても依然俺の腿を触ってる聡。その顔をちらりと横目で窺ったけど全く変化がない。
セクハラ受けたりする女性ってこんな気持ちなんかな。
一発ぶん殴りたくなりそう。

そんな中で、待ちに待ったデザートが運ばれてくる。
それを機にやっと太ももを撫ぜてた手から解放されて安堵した。

「雅」

「なに」

そっぽを向いて、デザートのケーキを頬張りながら一応は返事をした。

「ごめん」

その言葉だけでは感情は読み取れきれなかった。
がっついてたせいで、あんまし味わえないうちにケーキは胃の中に入っちゃったし。

「べーつに」

それだけいうとまた聡が「ごめん」とだけ呟いた。
はあ、とため息を吐いてもくもくともう一つのデザートに手を伸ばす。
甘く濃厚そうなバニラアイスとふわふわのパンケーキ。
食べてみれば、やっぱしうまかった。

「雅、さっきは悪かった。平気か?」

愁汰が俺に話しかけると柚木くんの機嫌がみるみるうちに急降下してくのが分かり、鳥肌が立った。
今回は怒鳴らない。けど、無言の威圧?っていうのか。そんなのが俺の肩にかかってる。視線がぐさぐさと刺さる。
…俺が自意識過剰なだけで、そんな気がするだけかもしんない。
あいつの目は、今はそのもっさい髪と眼鏡で見れないから。

「ちょっと気分悪ぃから外の空気吸ってくんね」

「…は、おい、雅?」

立ち上がって急ぎ足で部屋を出た。
背後でガタンと大きな物音がして、次に聞こえたのは愁汰を引き留めてるどこか甘えたような柚木くんの声。

その場所を急ぎ足で離れる。

だるい。体が鉛みたいに重い。
ずるずると廊下の壁に凭れ崩れ落ちる様に床にへたり込んだ。
やべ、俺、めっちゃヘタレ。

階段を昇ってきてた給仕の人達にはびっくりされたけど気にしてらんない。

「帰りたい」

あんだけ大口叩いたんだけどなー。馬鹿だな、俺。
途中で放棄すんのは駄目かな、やっぱ。

























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