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理由なんていらない(山本)



「よっ、名前!!」

「あ、武。」

隣の席でにこりとこちらを向いて笑う幼馴染に心臓が波打つ。
その笑顔を見るだけでもいい。最初は、そう思ってた。

「苗字さん。呼んでるよ?」

一人の女子が彼女に話しかける。教室の外には一人の男子生徒。

「・・・またなのな」

いつもの光景。名前は、笹川と並ぶ程人気者。
それでも、本人はそれに気が付いていないのだ。
俺が言ったら駄目だとも思うが、その位鈍い。

「やっぱり、告白みたいだね。中庭か校舎裏かな・・・?」

俺の隣にいつのまにか来ていたツナが言う。
そんなの分かりきってるんだぜ?

「ハハッ。って、ツナはいつのまにいたのな?」

笑顔を貼り付ける。もしかしたら、バレるかもしんねーな。

「ハァ・・・。山本、行って来たら?先生にはちゃんと言っておくしさ、」

「おい、野球馬鹿!10代目の手を煩わせんな!!」

獄寺にも言われるなんて俺って結構バレバレかもなのな・・・。

「サンキュ、ツナ!・・・ちょっと行ってくるのな!!」

教室を抜け出して、中庭に駆け出す。居なかったら別のところを捜そう。
そんな事を考えているとビンゴだった様で中庭に寂しげに佇む君がいた。
誰かを傷つける事が嫌いなあいつ。
優しすぎると周りは言っても、ただ笑うだけだった。
誰かに横から掻っ攫われてしまうのは嫌だと感じた。
ずっと、隣にいたのは俺なのな。
そう思い始めたのは、
名前が告白を断るときの言葉を偶然聞いてからだった。



『ごめんなさい。好きな人がいるんです。』



その言葉が俺の心臓を抉った。
何度も、何度も耳の中でその言葉が響いた。

「あー…、名前大丈夫なのな?」

「…武。別に、大丈夫だよ。」

「なら、よかったのな…。」

優しく頭を撫でる。昔から名前が泣きそうになるとこうしていた。

「ちょっ、子供扱いしないでよ!!」

「別にそんな事はしてないぜ!?」

「そ、それより・・・。なんで武がここにいるの?」

「あー・・・、」

沈黙が流れる。理由をどうしようか。
普段、野球でしか使わない頭をフルに使う。
よし。決めた。後悔しない様にちゃんと告げよう。

「俺、名前の事が好きなのな。ずっと、前か
ら。」


「・・・え?」

聞きなおされて顔に熱が集まるのを感じた。

「・・・ははっ、じゃあまた後でな!!」

恥ずかしいという気持ちがこの場から立ち去らせようと急ぐ。
けれど、それは名前の腕に絡まった手によって阻まれた。

「ほんとに!?嘘じゃない!?
武!!今日って、エイプリルフールじゃないよね!?」

エイプリルフールは確か4月なのな・・・。

「嘘なんてつけるはずがないのな・・・。付き合ってくれるか?」

恥ずかしくなって顔を逸らす。

「う、うん!!私も・・・、武の事が好きなの。」

ふわりと柔らかく笑った君は綺麗で思わず抱きしめた。

「よかったのな・・・」

力いっぱい。けれど、大切な君が壊れないように・・・。
鐘が鳴るのもお構いなし。それから、腕の中から解放する。

「でも、なんで?」

「傍に居させて欲しかったからなのな。
・・・けど、理由なんてこの気持ちにいらないのな。」




隣でずっと笑いあえるだけで幸せ。

―――――・・・目一杯の愛で君を包もう。










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