6.獄寺
昔、親の仕事の関係で連れられて来られた小規模なパーティ。
愛想を振りまく大人たち。
色んな音と匂いが混じる喧騒の中。
そこで丁度同い年位の少女と知り合った。
日本人らしいが、流暢なイタリア語を話していた。
黒の瞳に黒い髪。東洋の人形を思わせる白い肌。
着飾ったドレスはごくシンプルで、その中身を引き立たせていた。
2、3週間そこに滞在しその子と遊び
色んな事を話した時間はすごく楽しくて貴重だった。
“こんどあったらぜったい、ずっといっしょだ名前”
“うん、やくそく!ぜったいだよ?”
お互いが好きだと口にしたわけでも、
小さいころによくやる結婚の誓いをしたわけでもねぇ。
そんなちっぽけな約束をしてから十年以上が経ち、
今の今まで約束なんて忘れてた。
なのに、予感めいた何かから懐かしい夢を見て思い出した。
当時の面影を残しつつも少し大人びた視線を漂わせる。
まるで、何かを探すようにそいつは廊下にいた。
目が合った瞬間に見開かれた睫毛が縁に彩られた黒の瞳。
口が微かに動き漏れた声が俺の名を呟いた。
「…隼人…?」
見知らぬ女から出た俺の名に警戒するのは、俺の傍にいた野球馬鹿と十代目。
やはり、十代目はさすがだと思ったのは当たり前の話だ。
俺らはリボーンさんの薦めで並盛高校に進学した。
そこからは、無事に卒業しすぐにイタリアへと渡った。
もう関わっている"それ"が単なる遊びじゃねぇって知った野球馬鹿は天性だったのか頭角を現し始めた。
そして、ボンゴレの業を背負い俺の上に立つボスである十代目は凛々しく真っ直ぐに優しさをもっている人物なのは相変わらずだ。
俺は尊敬すべき十代目に見合う右腕になるべく未だに修行を重ねていたりする。
…釈明をしようにも全ての視線を集めるのはかったるい。
「十代目、後で説明するって事じゃ駄目っすか?」
「なぁ、獄寺…。あいつ、なんなのな?」
「あ゛?…ちっ、後で説明してやるよ」
小声で話しながら会話を進める。
すると自己紹介云々全てが終わりあいつは席へと着いた。
相手へと視線を投げ、
そして、後からそれに続く十代目と野球馬鹿。
歩みを進めて屋上へ入る。
勿論、扉を開けておいて十代目が先に入ってからだ。
二つの瞳に見つめられながら、口を開く。
「十代目、こいつは俺がイタリアに住んでた頃の古い知り合いっつか…
一応は一般人ですんで!」
「……父の友人の子供同士ってわけです。
隼人、訂正するけど今はボンゴレ暗殺部隊秘書なの」
「なっ!?…シャマルの野郎…なにが行方不明だ…」
「え!?…そうなんだ」
「へぇ、そうなのな?スクアーロ、元気か?」
警戒を解いた二人には心なしか笑顔が戻った。
「えぇ、はい。作戦隊長は耳が痛くなるほど元気ですよ」
「えっと、じゃあ、俺らは失礼するね?獄寺くん」
「…はい!!十代目のお手を煩わせてしまいすみませんでした」
「いや、あはは…」
バタンと扉がしまり、二人だけの空間が広がる。
「隼人、私ね、あの後で父親の会社が倒産して、
路頭に迷ってた時にXANXUSさん達から助けられたの。
それで秘書をやってるんだけど、今度はボンゴレ本部。
つまり、ここに移動になって迷ってたってわけ。
それに、隼人がベルと同じ属性の立場だって聞いて探してた」
「お、おう…」
「でも、幼いときに約束したのは果たせそうにないんだ…」
「なっ…、どういうことだ?」
「…結婚するの。誰か別の人の伴侶になるの、なんでかな。
今まで散々探してたのに…っ、
…別の人のお嫁さんになる直前に会うなんて…
神様って本当に意地が悪いよね」
そう言いながら目を伏せた名前の様子が儚く映る。
もっと早くに、再会すれば結末は違ったのか…?
約束なんて忘れてくれた方がいいんだよ
***
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すみませんんんっ(泣)
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