1.雲雀
幼馴染でずっと一緒。
それが僕らの関係で、これからも変わらない。
2年の廊下を見回り中。
遠くから見えた大切な君の姿に気が付いて歩み寄る。
「…名前、君が草食動物達と一緒じゃないなんて珍しいね」
「あ、恭弥。今日、ツナは京子とデートなんだって」
悲しそうに笑顔を作る君が痛々しい。
「ふーん、で、何してたの」
「えっとね、友達の相談にまた乗ってほしいんだけど…」
「おいで…、応接室に行こう」
おずおずと分かりきってる嘘をつきながら見つめてくる名前には即答で返す。
「ありがとう、恭弥」
二人で応接室まで静かに歩く。
無駄な会話なんて一切ない。
だからこそ、心地いい。
「着いたよ。…で、その子の相談ってなに?」
「前に話してた事に展開があってね、好きな人には別に好きな人がいて…」
「それは、前も聞いたよ。…それで?」
「その二人が付き合い始めたんだって噂があるんだ…」
「ふーん、で…?その子は何を相談したいわけ?」
「…諦めるべきなのかな。…あ、えっと、どう思う?」
名前がこうやって僕に相談を始めたのは1年前だった。
それから定期的に『友達の相談』と称してはこうやって、
相談を持ちかけてくるようになった。
切なげに歪められた眉やその表情を見ているのは辛い。
「さぁね、何も行動しないままでいいのかなんて知らないよ」
「告白するべきかな…」
ただただ俯いて弱弱しく呟いた君が目の前にいる。
そんな表情をさせる、君の思い人が憎い。
いつだって、そう思う。
叶わない恋なんて、しなければいい。
最初は、そう思っていた。
けれど、今は僕だってそんな恋をしてるんだな。
そう思ったら自虐的な笑みしか浮かばない。
「当たって砕けたときは全部破片を拾い集めてあげる。それに、それは噂だからね。真意は確かじゃない」
「恭弥が、そういうなら頑張ろうかな」
「友達じゃないんだ?」
「え!!…あ、うん、友達が…だけど。
ありがとう。恭弥!!」
少し明るくなった表情で応接室を出て行く君。
いちばん近くできみの恋を見てきたんだ
「せめて、君が笑顔でいれればいい」
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