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KILL ME










"寝転ぶ貴方のその白く細い首筋が、
月明かりに照らされてすごく甘そうでそれでいてとても綺麗だったんだ"



いつもいつも息苦しさに目覚めると、彼は決まってこう言った。
殺してくれて構わないのに。

咽び泣き、醜く鼻水を垂らしながらその綺麗な顔を歪める。
己の中に秘める殺意は狂気となって内から溢れ出てるんだよ。
―…彼が俯くとその金糸の様な彼の細く美しい髪がはらりと落ちた。
それがなんとも言えないくらい艶やかだった。




"ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ……!!"



譫言の様に、狂った様に、綺麗な薄い形の唇から紡がれるのは壊れた言葉。

まるで、壊れたオモチャみたいだ。


僕は彼に殺されることを望んだ。

でも、それは決して強制ではないのだ。と。
言い訳がましいその言葉は君を鎖の様に縛り付けているのかな。
だとしたら、早く断ち切ろう。断ち切る絶好のチャンスだろう?


視界が霞む中で罪悪感に苛まれ苦しむその顔。
それを見る度に悦に浸るようになったのはいつだったか。

殺してとお願いしたのは僕の方だ。
君は悪くない。誰も悪くない。僕が悪いのだ。
僕はお願いする時、こう付け足したのだ。

"ナイフや銃じゃ、君に殺された気がしないんだ"

戸惑う君は瞠目し指の先まで震えていた。

"だから、君のその『手』で殺してよ"

そんな青褪めた顔をしないで?
これは僕の本望だ。

彼の指は僕の首を絞めつけたまま。
それでいい、それでいいのだ。
…止めないで。

ああ、だんだんと心臓の脈が弱まってくるのが分かった。
脳に酸素が回らず世界が歪み視界が揺れる。
どくり、どくりと弱々しい脈はこのままいけば止まるだろう。


「アイシテル」


霞む意識。まだ、僕は笑えているだろうか?
声は掠れ、口だけがゆっくりとその言葉を告げる。

今回は、本当に、やっと逝けるのだから。
最後に愛の言葉を告げると、君の顔は更に歪んだ。
そんな顔が見たいんじゃない。
だって、君は、人を殺したい。そう言ったじゃないか。

「―ぅあ、あ、…俺も…っ、……愛…してる……ッ」

甘い言葉の中、僕は死を迎えた。












ごめんね、愛しい人。
















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