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It is like to rain.







じめじめとする梅雨の雨は、
自分の心を暗くする。


なのに、梅雨じゃなければ身を包み込まれるみたいで
すごく安心するんだ。

「あーあ」



街中に響く雑踏からの音も
排気ガスの息苦しい空気も
目に飛び込んでくる全ての景色も

全てがシャットアウトされてる。


そんな雨の日は
気持ちが高揚する。


でも、なんで、
今日はこんなにも体が重いのかな。


町行く人は気にも止めない。


くたびれたサラリーマンは
藍色の傘を引きずりながら歩いてる。

その顔には生気がなくて、
不気味だった。



私が差してたはずの赤い傘は
風に流されて
空高く舞い上がる。

つんざくような
女の甲高い悲鳴が響き渡って
景色が目まぐるしく
ぐるぐると自分の前を回ってる。


いつのまにか体は動かない。
金縛りにでもあったのかなと
思えばそうでもなくて、
見知った顔のついた物体が
目前にころがる。



周りには人だかり。
叫ぶ声が響く。
機械音が鳴り響く。


やかましい空間にわたしがひとり。




取り残された。



私の傘はどこにいったのかな。







『あーあ、ばいばい』








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あきゅろす。
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