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背中合わせ 7




何故、彼女が我輩の傍を離れないのか。
不思議でならなかった。
理由を尋ねても、「あなたが好きだから」の一言だけ。

どこからが本心で、どこからが建前なのかが分からない。

自分とは違った艶やかな黒い髪と少し黄みがかった肌。
日本では代々続く家名である事。
彼女の両親もそのまた両親も、
日本では好奇の目に晒されて疎外されていたためイギリスへ移り住んできた事。
年々、女性的になり独特の色香を放つ彼女。
リリーとは違った魅力。
その存在に心を許したのは学生時代の頃の話だ。

ブラックと抱き合っていた時に、
ふつふつと湧き上がったのは疑念と裏切られた事への憤りだった。

彼女といると、よく分からない感情に弄ばれる。
今だってそうだ。


「風邪を引くぞ」

置いてあったローブを彼女の肩へと掛ける。
どうやら、秘密の部屋が開いたという騒動によって彼女は秘密解明に動いていたらしい。
その事を校長から知らされて、
奇妙な動きを見せていたのはそのせいかと納得する。

「貴様はバカだ」と、その頬を撫でて呟いた。
互いに叶わぬ想いが胸の内にあるのだから。



「誰を愛していても構わない、か」

「んんーっ?…えっと、セブが何で此処に…。
って、あぁ、私があなたの部屋で寝ちゃってたのね」

「…また余計な事に首を突っ込んでいたようですな?」

「げ…。…まあ、ハリーが全て解決しちゃったけどね」

彼女の目の下にうっすらと隈が見える。

「少し寝ていろ、貴様に体調を壊されては使えるツールが無くなるのだ」

「なぁに?今日は、妙に気遣ってくれるのね」

「暇を出さんでもないぞ?」

たった一言で、瞳を揺らし不安げに見上げてくる名前の姿が目に映る。

「寝るから、愛想尽かさないで」

「尽かす前に愛想など元々ないだろうが…」

「追い出されて傍に入れなくなると呼吸困難に陥っちゃうから」

肩を竦めて冗談めかしていう彼女をソファへと連れて行く。
ソファに身を沈めた名前に毛布を掛ければ微笑まれた。

「貴方が誰を永遠に愛そうと憎もうと構わないのよ…、本当に」

瞼を閉じて幸せそうに眠った彼女を見下ろす。
揺らぐ感情を押し込めて、息苦しくなる感覚に戸惑った。
これは、罪悪感なのだろうか。

「貴様は――…、」




苦々しげに吐いて出た言葉は空気へと吸い込まれ、無音になった。



「セブバカだもの」


彼女の声が脳内に木霊する。





リリー、愛しい人。
私はどうすればいいのだ。









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あきゅろす。
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