背中合わせ 5
年月は経ち、たった7年間の学生生活は終わりを告げた。
あっという間に終わったそれは、
別段振り返る気にもなれない。幸せな記憶以外は。
少ししてからの事だった。
リリーの結婚式への招待状が届いた。
私の居場所を突き止めることに時間が掛かったみたいで、
招待状が届いた翌日に行われるところだった。
なんだか、二人は見るからに幸せそうだった事を覚えている。
その介添人も笑みを浮かべ誇らしげだった。
このご時勢には珍しいくらいに幸せそうで、
陰鬱さも振り払われた素敵な結婚式になっていた。
「…赤毛ちゃん、結婚おめでとう」
みんなが彼女から離れて料理へと集中しだした時を見計らって彼女へ近づく。
「名前!!来てくれていたのねっ!!」
花嫁衣裳を身に纏った彼女からハグをされる。
背中へと手を回し肩越しに見つめた先には元悪戯仕掛人達。
少し驚いたような、苦々しげな、奇妙な表情を浮かべている。
それに対して、にっこりと勝ち誇ったような笑みを浮かべれば、
すぐにでも引き剥がそうとせん勢いでくしゃ髪くんとブラックが飛んでこようとする。
「むしろ、招待されている事の方が不思議。
…もう帰るから少しでも顔を見せておきたかっただけよ。
あなたの旦那とその番犬に呪われないうちにね」
「もう帰るの?楽しんでいけばいいじゃない!」
「嫌われ者は退散するわよ、バカじゃないもの。
お願いだから、気を付けてね?このご時勢なんだから」
少しして離れ、幸せそうに微笑む彼女の頬を撫でる。
綺麗だな。と、素直に思った。
「名前、あなたも対抗勢力に入らない…?」
「私にそれを聞くの?」
「まさか、あなたも闇に回ったんじゃないわよね!?」
今度は、しかめっ面で厳しい顔をされる。
「…両親に存在も隠されてて、言わば中立よ…。
純血だからこそ、狙われてないけど。
向こう側ならここはもう火の海と化してるわよ?」
苦笑いが零れた。闇の勢力はどんどん規模を拡大し、強くなっているから。
彼女はマグルの血筋だし、見つかると厄介だろう。
「そうよね…」
「じゃあ、帰るから。こんな変な世の中が終わったら気晴らしに遊びに行こう」
―…それなのに、運命は残酷だと思う。
“名前を言ってはいけないあの人が一人の赤ん坊によって、滅びた!!!”
そのニュースは一夜にして各所にふくろう便や口伝いで駆け巡り出回った。
それはもう浮かれている人達が続出するくらいに。
けれど、彼が望んだ結果にはならなかったのだと彼が帰宅した時に感じた。
私は、どちらにも関わる事が出来なかった。
だから、腕に印が刻まれる事も無く彼だけに全てを背負わせてしまったのだ。
「セブ、セブルス…」
悲壮感にくれたセブルスの肩へと手を置く。
そうしたら、振り払われてしまった。
「放っておいてくれ」
「ダンブルドアの元へ出向いたの?男の子は?生き延びたんでしょう?」
「……マグルの家で育てられるそうだ」
「それで、ダンブルドアはなんて?…もう、あんな危険な事を続ける必要はないでしょう?」
「教師として、ホグワーツへ行く。ダンブルドアは貴様が一緒に来るかどうかは好きにしていいらしい」
「なら、助手として赴くわ。ねえ、リリーは…?」
「リリーは死んだ。……ジェームズ・ポッターもだ。
そして、裏切ったのはお前も知っている奴だ…」
「そう…。なぜ、苦しそうなのに泣かないの」
「涙は枯れ果てた」
「嘘つき。あなたの傍で、涙が出るまでずっと見守っててあげる。
あなたが誰に恋焦がれていてもいい。誰を愛していてもいい。」
「なぜ、お前がそうまでして傍にいる必要がある」
「さあね。神がいるならその人に聞いて」
「やはり、頭のネジが緩んでいるんじゃないか?
相変わらず、学生時代と何ら変わらん」
「ええ、そうね。親の資産を食い潰してる脛かじりだもの」
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