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背中合わせ(学生セブルス)






「ねぇ、黒髪くん。背中貸して」

最初に会った時の話。
目前の黒髪くんこと、セブルス・スネイプは目をまん丸く見開いていた。
赤毛ちゃんが前に彼についてを事細かに教えてくれたからすぐに分かった。

「あほ面ね。別に、私は純血だし…。穢れてないわよ?」

「知っている。…リリーと仲が良いだろう。
それよりも……、何故僕なんだ。お前はグリフィンドールだろう」

「ああ、赤毛ちゃん!お前じゃなくて名前ね、よろしく」


手を差し出したら、ギッと睨まれた。手負いの動物みたいだ。
彼のローブの端々が汚れている。
そういう風にした犯人も私は知っている。名前は知らないけど。
黒髪に血色の悪い肌。目つきの悪さ。でも、嫌いになれない。
何故かは、自分にも分からない。
波長が合うのかもしれないな、と。呑気な事を考えていたら喉元に杖が突きつけられた。

「あなたの雰囲気が好きだから、かな?」

「……チッ、勝手にしろ。ただし、話しかけるな」


そこから、天気がいい休みの日の習慣になった。



―…時が経つのは早い。と、思う。
彼と彼の持つ居心地の良さと出会ってから3年が経った。


「いつまでこうしているつもりだ」と彼は言った。
私からは見えない彼は眉間に皺を寄せているだろう。
今日は特に不機嫌だったから、声色が少しだけ刺々しかった。

「もう少しだけ。…セブは見られて、誤解されるのが嫌?」

青空を雲が風に乗ってゆっくりと流れていく。
別の寮や、同じ寮のものが見ても異様な組み合わせだと思う。
グイフィンドールの私とスリザリンの彼。

「名前、お前まで巻き込まれる必要はないだろう」

「彼らを敵に回すのは得策じゃないけど。
もう、敵に回しちゃったみたい」

お節介な悪戯仕掛人と自称・通称されてる人にも目をつけられた。
悪戯はされてないけど。
…校舎から、誰かがこちらへ歩いてくるのが見える。
自寮愛に満ちた4人組。人気者とその引き立て役。だと思っている。
名前も一応、覚えた。ぺティグリューくんとは居残り仲間だったりもする。…警戒されてるけど。
どうやら、赤毛ちゃんを追っているらしい。リリーって言ったっけ。
彼の背にもたれるのを止めて、彼の目を塞ぐ。

「つまんなくない?」

「いや」

「そっか」

「ああ。だから、いい加減にそれを外せ」

「やだ。彼らが行ってからね」

後ろを見ると、赤毛ちゃんは気が付いて踵を返していった。
さすが、優等生。
いつの間にか二つに分裂していたらしいが、誰も近寄って来なかった。

「読書の邪魔しちゃってごめんね」

「慣れている。で、今度はどうしたんだ」

「別になんでもないの。ただ、人間関係って疲れるなぁって。
ほら、浮いちゃってるでしょ?私」

「自覚してたんだな」

「そりゃあねぇ…」

苦笑いが零れる。









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