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末期症状(シリウス)









一つ上の学年一の色男に言い寄られる。
理由は分からない。

一目惚れしたのだ。そう言われた。
けど、一目惚れされるほどの器量も容姿も持ち合わせていないから不思議なのだ。
他人の惚れた腫れたに興味何てなかったし、本当に分からない。


彼が近づく度に彼のファンに通せんぼをくらう。
理由は一つだった。
彼のせいだと分かっているのに、甘んじてそれを私は受ける。

だって、私が何かをしたわけじゃないから。
彼女たちは大好きな色男に怒りをぶつける事はできないみたいだから。



愛の言葉を言われる度に、「嘘つき」と彼へ言葉を突き返す。
それを繰り返していたら自分が嘘つきだと分かってしまった。

彼に惹かれ始めてるのか。
そう自覚してから知恵熱に悩まされて、従弟にも心配をかけてしまった。
避けて、避けて、避けて。
ここ一週間は平穏な日々が続いている。


昨日は、他の女の子とべったりくっついていた彼を発見した。
女の子が彼の腕に寄り添ってい歩いていた。
幸せそうに笑うその女の子が初めて羨ましくなった。

もう逃げる必要はない。追われる必要もない。
そう思ったら、安心と同時に胸の奥が苦しくなった。
元から壊れている心臓が脈を打つけどそれが何を意味しているかなんて分からない。


……初めて授業をサボってしまった。案外、つまらないなとため息が漏れる。
きっと、あとで従弟にバレて怒られそうだ。
未だに胸に隠れている感情が愛を含んでいるかは分からない。

「あーあ」

同じ寮で学年が違っていても聞こえてくる噂は絶えず聞こえてくる。
筆頭となって率いていて憧れられて輝いてる存在。
そんな存在に心惹かれ始めてる。影が光に惹かれるように。

「溜息なんか吐いてどうしたんだい?名前・苗字」

いつの間にか隣に現れていたくしゃくしゃ髪の美形くん。…素直に驚いた。

あれだ、彼と一緒にいる人だ。悪戯仕掛人の一人。
先導して悪さをするからマクゴナガル先生の眉間の皺の原因。

「授業は?」

「そういう君こそ」

「サボったの」

「僕も同じさ。怪しくてもよければ相談くらいのろう。
この僕が相談に乗るんだ、一発で解決するよ。
例えば、恋の相談だとかね。僕にも愛しい人がいてね、リリーというんだ。
中々、振り向いてもらえない」

メガネの奥で瞳が光った。好奇心と真剣さが見え隠れする。
メガネとくしゃ髪と悪戯仕掛人、それからリリー。
ああ、思い出した。

「ジェームズ・ポッター…」

「僕の名を知って頂けているなんて光栄だ、それなら、シリウスも知っているだろう」

「ええ…、学校一の色男」

「いい褒め言葉じゃないか、シリウス!」

「…え」

「よう……」

気まずそうに彼がひらりと手を振った。
…いたのか。不意打ちをくらい顔に熱がどんどん集まる。
気付いたら脱兎の如く逃げ出していた。


走って走って、誰も来ないだろう教室へと逃げ込んだ。


バクバクと走ってきたのとは違う気がする鼓動が煩い。



「っ…」


心臓を締め付けられるような痛みで、私は意識を失った。







従弟と別の人間の声が聞こえて目を覚ますと保健室だった。


「…っなんで、ここに」

寝顔を見られた事に恥ずかしくなった。

「お前の従弟に怒られたんだ。悪かったな」

「シリウス先輩、少しいいですか?名前の事で忠告があります」


二人が席を離れた。
ぼそぼそと会話をしていて何を言っているかは分からない。

固く目を瞑って、戻ってくるのを待っていたら、

「まだ無理をしちゃ駄目よ、寝てなさい」

と、マダム・ポンフリーが私の体をベッドへ寝かしつけられた。




従弟とシリウス・ブラックは授業があるし、戻ったみたいだった。


眠気に身を任せて、夢の中へ落ちた。



「名前」


夢の中で、彼が語り掛ける。
なんだろう。だんだんと意識が浮上していくのが分かり手を伸ばす。

目を開けた先には人がいた。


「こんにちは」

「こんばんはの間違いだろ?」

医務室に昼間の明かりは皆無だった。真っ暗な中に人の影。
月明かりが照らしてようやく姿が見れた。

「そうですね、こんばんは。どうかしたんですか?」

「告白しに来た」

笑みを浮かべたその唇に手を伸ばし、ついつい撫でてしまった。
雲で月が隠れると全く見えなくなってしまうから頬に手を添える。
彼の体温が少し上がった気がした。

「…お前が欠陥だと思ってるそれごと名前自身が好きだ。
俺と付き合ってくれ」

「心臓の事誰から聞いたんですか」

「お前の従弟に。最初は知らぬ存ぜぬを通されたが話してくれた。
なあ、俺じゃダメか?」

「あなたがダメなんじゃなくて、私がダメなんです。
きっと、迷惑だって掛けるから」

「名前に迷惑かけられるなら喜んで受け入れる。
初めてなんだ。俺も…、こういう気持ちっていうのは…」

「この前、女の子と歩いてました」

「…ああいう関係の奴は全部切ったんだ。お前への誠意。
それに、今もこの先もお前だけでいい」

真摯な瞳が私を射抜く。

「本当に?」

か細く震えた声が出てしまった。

「ああ、なんなら破れぬ誓いだって結ぶ」

「…珍しくて付き合ったらつまらない奴だったってなりません?飽きて捨てたりしませんか?」

「疑いすぎだろ…、俺ってお前にはどう映ってんだ?簡単に手放さない、約束するさ。
俺と付き合ってくれ、名前」







「私でよければ」







その言葉と同時に抱きしめられた。
恥ずかしさもあったのにゆっくりと心臓が脈を打つ。
心地いいくらいに柔らかな心音だった。





「あなたが、好きです」

「俺は、お前を愛してる」


さらりと言われた言葉とともに頬にキスをされた。
その瞬間、バタンと扉が開いて何かが倒れこんでくる音と数人の呻き声が聞こえた。


「プロングス、ムーニー、ワームテール。お前ら全員表出ろ」

「悪かったね、邪魔をして。パッドフット。
で、どうだい?お悩みは解決したかな、名前」

「あなたの方は?」

「まあ、気長にやっていくさ。さあ、戻ろうか諸君。
パッドフットは僕らがお邪魔だってさ」










ああ、なんて、幸せな瞬間だろう。




笑顔が溢れた空間に幸せな気分になる。




あの後、気付けば朝まで医務室で話をしていて、
マダム・ポンフリーに全員が怒られた。
私の退院も長引いた。












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