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Happy Valentine(シリウス)






甘いお菓子の匂いに噎せ返る。
この日はいつもそうだ。

「名前。駄目だ、寝かせてくれ…」

「今年もそんな時期になったのね」

呑気な名前に苛立ちながらも、
その膝に頭を転がして彼女を眺め始めたのは七年も前からだ。
互いに彼氏とか彼女とかそう言ったくくりが面倒だった。
…誑かしまくっていたのは、
学校に入学してから3年経った頃辺りだったか。

名前は俺とは違って、
近寄ってくる男共を蹴散らすばかりで相手にもしていなかった。

「毎年、毎年。女子ってのは面倒だな」

「そう?女の子が女の子なんです!って主張するための儀式よ」

「儀式ね…、で、お前は俺にくれないのか?」

催促しても渡されないのは知っている。
むしろ、あまり甘い物を好まない自分を知っているからこそだが。

「あんたの彼女達のを貰ってあげなさい。
で、処分はどうせチョコ大好き男でしょうし?」

「あー、あいつな。あいつは彼女のしか食わないってよ」

「あら、彼女出来たのね」

「そうらしい。奥手過ぎて手も出せないんだと」

「じゃあ、自意識過剰男は?」

「愛する未来の奥さんのしか食わないんだと。
お前からは例外だろうけどな、…」

「なんてったって、そんな奴の幼馴染だから?」

名前の手で梳かれる髪は心地がいい。

「そうそう。俺の台詞取るなよ」

「何度聞かされてると思ってるの?」

ここが親友宅であるのを忘れるくらいに、
気分がよかった。

街中、チョコの匂いで充満しているせいか。
それとも彼女の香りに慣れているせいか。

心が満たされる。


「なあ、名前。
そろそろ、お前の彼氏になりたいんだが…」

「…なにそれ、何の冗談?」

冷たい目から目線を逸らし、
先ほど親友から貰ったチョコをポケットから取り出して名前の手へと渡す。

「飽きさせないで、それが条件」

「俺がお前を?冗談じゃないぞ、お前が飽きさせるなよ」














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