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10minute ago(リーマス)



とある日の事。
学校の図書館で勉強をしているリリーを見に行って、小声で世間話をしていた。
学校で起こった出来事や噂を次々と話題に上らせていく。

「そういえば、名前の女らしさが増したんだよな」

話は、親友の従妹である名前の話に移った。

名前といえば、
学年一可愛いと親友が絶賛するリリーと並んでいると、
正反対な印象を誰しもが与えられる。

正反対と言っても悪い意味ではなくて、
彼女の顔立ちは綺麗だ。

ストレートの黒い髪と従兄同様のヘーゼル。
彼女の瞳は陽の射し方によって変わった印象も与える。
白い肌がそれを強調し、
整った顔立ちと小柄であってもそのスタイルが彼女の美人度を上げる。
行動故に、女生徒からも男子生徒からも人気を誇っていた。

彼女曰く「望まれたからそう行動するだけ」らしい。
その謙虚な態度が教師陣にも人気の秘密だ。

「ちょっと、ジェームズ。
下世話な話をするなら出て行って頂戴!
名前は確かに恋してるみたいだけど」

「ムーニーも、ワーミーもそう思うだろ?」

「ああ、なんだか少しだけね」

「ぼ、僕もそう思うよ!」

「貴方達まで!」

「ひぃっ…。あの…で、でも、誰だと思う?」

リリーの叱責に驚いたワームテールが肩を竦めて話題を振った。

「そうね。シリウスとかじゃないかしら…」

「最近よく、見かけるよね。二人でいるの…。
ム、ムーニー、ど、どうしたの…?」

僕の好きな人と親友が隠し部屋で、
何かをしているのは知っていた。

問いただしたのはつい最近。
満月の日にいつも通り叫びの屋敷へ通い、
朝に医務室へ誰にも知られずに向かっていた時に彼らを見かけた。

そして、悪戯仕掛人で合作して完成させた『忍びの地図』のおかげで事が発覚した。

「何故、親友の大事な従妹を連れ出しているんだ」

「ただの勉強だ。そうかっかすんなよ」

今日は見回りに行くとパッドフットに伝えれば、
じゃあ23時くらいに、誰にも気付かれずに来い。
それだけを言われた。

夜中に談話室を抜け出して予定よりも早くに、
隠し部屋に到着した。

中から聞こえるのは嬌声だ。
甘い声はくぐもっていたけど、
聞き覚えのある彼女の声で僕は悟った。

声が途絶えた後で、気持ちを落ち着かせて部屋をノックした。

「名前、パッドフット。いるかい?」

「ああ、入れよ。ムーニー」

情事の後のくせして涼しい顔をしている目の前の親友。
それに、苛立ちが増した。
馬鹿だろう、そういって名前の目の前で殴ってしまいたい。
キレないように握りこぶしを作った。
……そこに爪を立てて自分を律する。
出来るだけ優等生のリーマス・ルーピンとしての笑顔を作ってにこやかに接してみる。

パッドフットは眉を顰めて、きっと、僕の心情を察した。
名前は笑みを返してくれた。

部屋を後にして、暗い廊下を少し歩いた。
月明かりは雲に隠れている。


「君らが恋人だったなんて初めて知ったよ」

真っ直ぐに見つめた先にいる黒の瞳は揺れる。

「違う事位は分かんだろ?何が言いてぇ」

「僕は彼女が好きだから、名前の幸せを尊重したいんだ」

「なら、安心しろ。あいつもお前が好きだしな」

苦々しげに彼が吐き捨てた言葉が耳を通して、
ゆっくりと脳へと染み渡るのにそう時間は掛からなかった。

それとともに、握っていた拳が彼の頬へ向かって飛ぶ。

「…ぅあ゛…てめぇ、何すんだ…」

「彼女が好きなのはお前なんだよ、シリウス。僕は横恋慕をする気もない」

教師と話す以外で久しぶりに呼んだ友の名が、廊下に木霊する。
激昂したはずの気持ちが今はすっかり収まっている。

「あいつは、お前が好きだって言ったんだぞ!リーマス!」

「勘違いだよ。本当に僕の名をだしたのかい?違うだろう…」


睨みあげるその瞳の先に僕がいる。
その中で僕は冷淡に無様に尻餅をついた彼を見下ろしている。

彼のその姿は、珍しいものだろう。
ただ、記憶を探っている彼はそんな事を気にしていない。


「っ…ああ、言ってねぇ」

「なら、僕のキューピッド役はここでおしまいだ」

彼の手を掴んで、立たせる。

「ああ、すまない」

「ただ、君の元ガールフレンド達が名前に手を出して彼女が泣いたら…」

「なんだよ」

「名前は僕が、攫うよ」

「優等生が何言ってやがんだ…。またな」

「ああ」










さよなら、僕の初恋。


【続く】



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あきゅろす。
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