離さない、(ディーノ)
「おかえりなさい、」
「あぁ、ただいま。名前。」
繊細な絵画にでも出てくるような天使。
太陽みたいな笑顔を浮かべて私の額に軽くキスを送ってくる。
最近、そんな貴方からは女物の香水の匂いが香ってきていた。
あぁ、またか。私には、軽く触れるだけ。
それ以上は決して触れてもくれないのに。
「ディーノ。私、何かした?」
いつもなら声を掛けないのに…、
「い、いや!!何もしてねぇから…、気にするなよ。」
ポンポンとまるで子供をあやす様に撫でられ、部屋の扉は静かに閉ざされてしまった。
これは、拒絶されたのかな。分からないや。
また、相談しに行こうかな。
「ロマーリオさん。…あの、ツナ君のところに遊びに行ってもいいですか?」
「名前嬢…。また、ボスか?」
いつも穏やかな顔の眉間に皺が寄る。そんな顔させたくないのに。
「あ、いや!!そうじゃないんです…。ただ、弟に会いたくなって。」
「そうか。じゃあ、ボスには俺から言ってお…その必要はなさそうだぜ、」
「…へ?」
振りむくとそこには、仕事服から着替えたゆったりとした格好の彼が玄関先にいた。
「あ…、気づかれちまうとはなー。…あぁ行ってこいよ、名前。」
寂しげに笑うのを見て、胸が押し潰されそうになる。
「は、はい。」
「リボーンにもよろしく伝えといてくれ。」
「…分かりました。」
黒塗りの車に乗り込んで後ろを向くと、
もう彼は部屋に入った後みたいでロマーリオさんだけが手を振ってくれている。
仕方がない。彼は忙しいんだから。
蹲って顔を伏せていた時間が長かったらしく弟のいるボンゴレ本邸に着いた。
「ふー…。あ、こんにちは。」
「こちらにどうぞ。もう少しでいらっしゃると思います。」
案内された部屋は天窓のついたテラスだ。
「姉ちゃん…!!なんだ、大事な客人って姉ちゃんだったんだ。
ったく、脅しやがってリボーンの奴。」
ススキ色の無重力ヘアをした愛する弟が駆けてくる。
「久しぶり、ツナ」
「うん…。どう?向こうの生活。」
「いつもと変わらない。でも、最近はディーノも忙しいみたいで…」
「はぁ…。こんなことな「チャオッス、名前♪」…ら」
「あ、リボーンくん。」
「お前今、幸せか?」
「っ…、幸せに決まってるでしょ?」
「あ、姉ちゃん。雲雀さんから伝言。
アイツが君を傷つけてたら僕が「君を攫ってあげる」…はぁ。」
ツナの苦労性は相変わらずらしい…。
気配もなく後ろから現れたのは恭弥くんだった。
なんでこうも容易く驚かされるんだろう。
「ねぇ、君。聞いてるの?」
「攫われるのは嫌。この話は終わりです。
…あ、リボーンくん。なんで、あのヘタレは触れてこないのかな。」
「…やっぱな。あいつに聞け。もうじき来るだろーからな。」
相変わらずニヒルに笑って去っていった。
「……へ?」
唖然とした。忙しいのに?何故?
「ちょっ、リボーン!?「口答えすんな、ダメツナ。あの事バラすぞ。」
…はぁ、もう。分かったよ。」
「ふーん。やるね、赤ん坊。」
方向転換して去っていく雲雀さんと自分の守護者に引きずられる我が弟。
…よく知る一定のリズムを刻む足音が近づいてくる。
「名前!?無事かっ!?…き、恭弥に攫われそうになってたんだろ!?」
慌てて来たのか、汗が額を伝っている。
「あ、多分、それリボーンくんの嘘です。半分本当だけど…。」
「ぶ、無事ならよかったんだ。」
くるりと方向転換をして帰路に着こうとしている彼を腕を掴んで引き止めた。
「…っ!?」
柄にもなく赤面してしまった貴方に驚く。
「…え。」
「す、すまねぇ」
「…っ、ふふっ」
「なっ!?笑うなよ!!俺、好きな女は大切にしてーから触れれねーんだよ!!」
耳まで赤くなって弁解する姿も初めてみる。
「あの、今も好きでいてくれてる?」
「あぁ、何よりも大切だ。」
「「一生、離さないから(な)」」
「じゃあ、女物の香水の訳は!?」
「へ!?あぁ、これだな…。」
小さな箱に入ったガラス瓶を取り出す。
「ディーノ、浮気してるなんて疑ってごめんね!!」
「疑わせてごめんな。名前」
〜小話〜
「ひ、雲雀さん。そろそろ離してください!!」
「僕は今、イラついてるんだ。これから、トレーニングに付き合いなよ。」
「ひぃぃいぃ!?」
「…しっかり、鍛えてもらえよ。ツナ。」
主人公はツナの姉。雲雀とは同学年。という、設定です。
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