嫌いになんてならないで(獄寺)
「10代目!!」
私の好きな人にとって、ツナと並んでいる私の存在は無いに等しい。
そう感じるのはいつもの事。…もう嫌だよ。
「ちょっと、獄寺!私を無視とか何様なわけっ!?」
「あ゛?名前よりも10代目の方が俺にとっては重要かつ大切なんだよ!」
「ご、獄寺くん!?ちょっ、名前も!!ここ教室だから!!」
顔面真っ青になったツナが慌てて止める。
「す、すいません!!10代目!!」
謝る人が違うと思うのは私だけだろうか?
横にいるツナを見つめると困った様な笑みを浮かべている。
私を見て欲しいのに……。
そう思っても、叶わない。
なんで、いつもこの目の前でツナに頭を下げている忠犬は見てくれないの?
いつだって君は私をみてくれない。
だから、構って欲しくて嘘を吐く。
「獄寺なんて、大嫌い。」
いつからか、私が獄寺を好きな事を知っているツナは真っ青。
代わりに獄寺は目を丸めてこちらを凝視。
山本は事情を知ってか知らずか笑っていた。
ムカツクな、天然。
あ、やばいな…。涙が出てくる。
押さえられない。
ソレを悟られないうちに教室を出た。
弱い自分は要らない。
なんであんな言葉を自分で言って泣いちゃうんだろう。
早く教室から遠ざかるために走った。このさい風紀委員なんて知らない。
「おい、こら!名前、待ちやがれ!!」
後ろから獄寺の声が聞こえた。え?幻聴?
戸惑い。悔しさ。苦しさ。悲しさ。後悔。
色んな感情が溢れる。
そんな中、追いつかれて腕をガシリと掴まれた。
「やっと、追いつけたぜ・・・。
なんで、お前はあんな逃げ足速いんだよ!!」
肩で呼吸をして、必死そうな目をしている獄寺がそのまま言葉を続ける。
「嫌っ!!」
聞きたくない。嫌わないで、お願いだから。
耳を咄嗟に塞ごうとするも、塞げない。
「お前が俺を嫌いでも・・・、俺は好きだ・・・」
「・・・はい?」
神様、これは何かの夢ですか?
掴まれていない手で頬をつねる。
「い、痛い。」
「当たり前だろーが!!もう一回言うぞ!!」
耳まで真っ赤にした獄寺が言う。
「そのだな、俺は名前の事を好きだ…」
フィと言い終わると同時に顔を背けた獄寺に嬉しさが込み上げて思わず、
抱きついてしまった。
それでも、引きはがす事なんてしない。
やっぱり、
「私、優しい獄寺が好きだよ!!」
にこりと笑って二人で笑いあう。楽しい。幸せ。
「「もう嫌いになんかなるなよ(ならないで)」」
余談
雲「ちょっと、何、僕の並盛で風紀を乱してるの?咬み殺す!!」
獄「げっ!!に、逃げるぞ名前!!」
このあと二人は授業開始の鐘がなるまで追い掛け回されるのでした。
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