背中の温もり

「なー伊藤ー」

「んー?何?」

「北海道はまだかよー」

「あー?聞こえねーよ」

バイクの音で話し声は聞き取りにくい。
風を肩に受けながら、俺達は広い道路を走る。

「一回降りねぇか?風がさみぃしよー」

「あー?」

だから聞こえないって…。

「さみぃって言ってんだろカッパーッ!!」

「うおあッ!?耳元で叫ぶな馬鹿!!鼓膜が破れちまうだろ!?」

焦った俺は道路の端っこに寄った。
背中にあった三橋の温もりが消える。
どうやらバイクから降りた様だ。

「ふー。良い景色じゃ」

「何ジジくせぇこと言ってんだ」

とか言いながら、俺も三橋の隣りに並んで目の前の景色を見詰める。

北海道までは、後もう少し掛かりそうだ。



「おい、そろそろ行こうぜ。こんな所で野宿なんざごめんだ」

「そーだナ」

暫く景色を眺めてから、再びバイクの元へ。
バイクに跨がれば、また背中に三橋を感じる。

あったかい…。

「休憩なしに行くなよ?いくら重ね着してても、風がキツいからよ」

「俺はあったけぇから良いけどなぁ」

「俺がくっついてっからだろが!!」

三橋に背中を一蹴りされた。
痛かったけど、その時の俺はきっと笑ってただろう。



またバイクが走り出す。
空は少しオレンジ色に染まっていた。

「三橋ー」

「んー?何だー?」





「愛してるー」





ブオオーッ





隣りを通り過ぎるトラック。



「あー?何?聞こえねー。もっかい言って」

「…何でもねーや」

俺は笑いながらバイクのスピードを速めた。
















END


あきゅろす。
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