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トラウマ
15



───ふ、と目が覚める。
何の前触れもなく、一瞬で呼び戻された感じ。
ただ体が重い。
頭も痛い。

…‥ああ、確か昨日飲み過ぎたんだっけ。
ちゃんと家に帰れて良かった。
だるすぎる。
しかも今日は1限からだ。
でもまだ外は薄暗いから、慌てる時間じゃないだろう。
もう一眠りしようかな。
目覚ましは曜日ごとに設定してあるし。

そんなことを寝ぼけた頭で考えながらゆっくりと寝返りを打つ。
何だか今日は肌寒い。
秋も深まったということか。



「───っ!」

危うく声が出そうになるのを、すんでのところで堪える。
寝返りを打った先に、人がいたのだ。


───なんで、ここに、先輩が。


全身一気に覚醒する。
なぜだ。
なぜ俺は服を着てないんだ。
かろうじてパンツは履いている。
どうした俺。
何があった。
ダメだ、全然思い出せない。
俺の服はどこだ。
てかここはどこだ。
俺の部屋じゃない。

頭に浮かんだ大量のはてなは回収できないけど、ここにいちゃいけないということだけは分かった。
俺の中の誰かが俺に警告する。

隣で眠る先輩を起こさないよう細心の注意を払って体を起こし、ベッドからゆっくりと立ち上がった。
少し肌寒い空気が服を着ていない肌に直接触れて、軽く身震いする。

早く出よう。
先輩が目を覚ます前に。

部屋の中を見回して室内にある物干し竿に俺の服が全て掛けてあるのを見つける。
それをまた音を立てないように手に取って身に着ける。
俺のリュックはベッドの脇に転がっていた。

これで出られる。
早く、一刻も早く、ここから離れよう。

俺は振り返ることもせず先輩が眠る部屋を後にした。
地図アプリを起動させて自分のいる場所を確認する。
駅は近い。
とにかく駅に向かおう。

スマホの時刻を見ればまだ朝5時を回ったところだった。
あさひ先輩からメッセージが入っていて、それを読めば俺が昨日酔い潰れていたということが分かった。

駅が近づくにつれて、人の姿がちらほら確認できるようになった。
外は早朝独特の澄んだ空気を纏っている。
辺りは俺の知らない景色が広がっていて、やけに現実味がなかった。


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