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短編小説
ほぼ100パーセントで
「好きかな、まあ、それなりに」


曖昧な返事はやたらと心臓に悪い言葉ばかりで。
ふふふ、と小さく笑う彼の姿がやけに綺麗に見える。


「それなりに、ってなんだよ…」

「それなりにはそれなりにだよ。そこそこ、まあまあ」

「なにそれ!」


ヒドイ!とオカマ口調で返せば、けらけらと笑われて。
軽くへこみながら目の前に置いてあるグラスを手にとり喉の奥へと流す。
入っていた氷が殆ど溶けて中身が薄くなっているやら、持ったグラスが汗をかき濡れていることもあって、本当に些細なことなのに少し苛立ちを見せてしまう。


「なに怒ってんだよ、らしくないなあ」

「…だってなんかさあ……」

「何だよ」


だって、だって
俺がいくら本気で言ったところで、彼はさらりと受け流し、
それこそ何事も無かったかの様に事を済ますんだろう。
どんなに気持ちを伝えても、曖昧な返事ばかりでは前に進めない気がした。


「なんなの。俺がお前に好きって言えばいいわけ?」

「そういうことじゃ……っ!」


そういうことじゃないんですよ!なんて、実は付き合う一番最初に注意された敬語が出そうになった瞬間、彼の顔がドアップになって目の前に写し出される。


「………っ!!」

「お前、俺が不器用なの分かってんだろ?」

「分かって、ます…よ、」

「敬語」

「…あ、すいませ…」

「…………」


はぁ、と少し笑いながら幸せそうに微笑んでため息をつく彼を見つめていると、「何見てんだよ」なんて言われて睨まれる。

なんて、自分勝手。



「とにかく、お前のことはそれなりに好きだよ」

「…はあ、」

「……バカ。お前、俺のそれなりにって、意味分かってんの?」

「まあまあ、そこそこ、でしょ?」

「……っ死ね」

「ええ、」



なんなのなんなの。
俺は今いけないことでも言いましたか、いえ言っていないはず。
だけどまさか「死ね」なんて言われるとは思っていなかったから、正直へこみ具合は凄まじいですよ。



「だ、か、ら……っ!!!」


ぐいっと胸ぐらを捕まれる。
まさか今度は暴力ですか、それはちょっと困るんですけど。
そんなバカなことを思っていたら、唇に、ではなく、唇の端に何かが触れる。


「………え?」

「俺が言うまあまあもそこそこも、ほぼ100パーセントなんだよ」

「え?」

「ああもう、お前やっぱ死ね!!」

「え、ちょっと……っ」



立ち上がって置いてあった俺のグラスを手に取り全てを飲み干し、
「ぬるい!」と叫んでどかどかと何処かへ行ってしまった。

何だったんだ、一体。



「………ん、待てよ」


今の嵐のような出来事をおさらいしてみよう。
俺がバカみたいに悩んでいたことを言ったら、またいつもみたいに流されたような気がしたけど
実は彼は思っている以上に、俺のことを思っていてくれて
しかもさっきは…


すっと唇の端をなぞる。
先ほど感じた温もりと感触をまだ覚えていて、顔が熱くなる。



「………あの人怖いわ…」


計算か、それとも素であれなのか。
まあ今はどちらでもいい。とにかく、あの人は思っている以上に俺のことを好いてくれているみたいだし。



だけど、



「………あのままにしてたら絶対誰かに取られるな」




うかうかなんてしてられない。
早いところ捕まえて、誰にも触れさせないようにしなくては。

だからまた、俺は言わなきゃいけないんだ。
例え曖昧な返事がきても。


「俺は、貴方が好きです」




何度だって、彼に好きと伝えよう。










ほぼ100パーセントで

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あきゅろす。
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