短編小説 ワールドワールド 要らない物は全て捨て去ったつもり。 大量生産されたものなんか、もちろん。 君への想いすらも捨て去った。 ただ、 理由は分からないけど、 たまに無償に寂しく思うんだ。 人恋しいわけじゃない。 況してや甘えたいわけでもない。 ただ、ただ 誰かに触れたくてたまらなくなるだけ。 そう思った瞬間、身体中を駆け巡るのは、昔の残像と君の懐かしい香り。 思い出したくないと思っているのに。 思い出しても仕方ないと分かっているのに。 なのにどうしてか 捨て去ったつもりのものは全て自分の中にしまわれていて。 気付くとその扉を開けていて。 その扉が開いた瞬間、 どうしようもなく、ただ涙が溢れるんだ。 ワールドワールド [*back][next#] [戻る] |