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短編小説
Say goodmorning.
お前に対して「おはよう」という一言を、俺は言ったことがあっただろうか。

例えば朝に学校でお前の姿を見て、わざわざお前が声を掛けてくれた時さえも、つまらない返事しか俺は出来ていなかっただろう。


例えば夜、激しく互いの存在を求め合った筈なのに、朝になれば横に姿は無くて、妙な虚しさを感じる。


感じる筈のない感情が込み上げてきて、何故か涙が流れていた。
俺らはそんな感情を持つような関係じゃないのに。






重い身体をベッドから出して、冷蔵庫から飲み物を取りに行く。
冷えた水を喉に流すと、カラカラになっていた喉が潤された気がした。



ああ昨日は、声が枯れるほど彼の名前を呼んだんだ。



ふと視線をテーブルに向ければ、白く小さい長方形の紙が置かれていた。
まじまじと見つめれば、文字も添えられていた。


内容はつまらない謝罪が書かれているだけだった。

「何言ってんだよ…」



俺が誘って、酔ったお前が乗ってきて、それでやっただけなのに。

何で、

「……何、謝ってんだよ」




お前を汚い目で見ていて、ただお前が少しでも近い存在になればいいと思って言ったのに。


好きで、好きで、好きで、
ずっと触れたくてたまらなかったお前に触れられて、あんなにも幸せを感じていた自分は、一体。


俺はお前との、後腐れしない、何もないフリをしながら少しでも近い存在になれる関係になることを望んだ。

だから、お前に何か思われること、責任を感じられることはしてもらいたくなかった。


だってそんなの、ハッキリと俺らの関係を物語っている様だろ。




こんな置き手紙さえ無ければ、お前と触れ合っていたという幸せの余韻に浸っていられたのに。


あんなにも近くに感じていられたお前の存在を、今はこんなにも遠く感じるなんて。







「…安土さん、」

「…っ、何だよ……」


ベッドに二人で座って、ただ名前を呼ばれただけなのに、こんなにも緊張して声が震えるなんて知らなかった。



「本当にいいんですか?」

「……何だよ、ヤんねーの?」


おずおずと聞く島川がたまらなく愛しくて、直ぐにでも触れて欲しいと思っていた。

だから、変に焦って返事をしてしまった。



「だ、だって、ヤるって…」

「女と同じ様にすればいいんだよ。別に痛くても大丈夫だから」


早く、早く、早く、
お前に触れてほしくて。



「…安土さんのこと傷付けることだけはしたくないんですよ、俺」

もうお前にはズタボロに傷付けられている、とは言わないで


「俺が大丈夫って言ったら、大丈夫なんだよ」


バカみたいに急かした。



でも…、とまだ踏みとどまる島川を押し倒して、深くキスをする。


「溜まってるモン、出したくねーの?」

「ッ………!」


耳まで真っ赤にして反応する姿が可愛くて、耳を舐めながら耳元で名前を囁いた。


「…もう、どうなっても知りませんよ」

「はいはい」



そう言いながらぎゅっと強く抱き締められた腕が、とても心地よかった。




「安土さん、安土さんっ……!」

「あぁっ…、んッ!」

「ねえ安土さん、俺っ、何か安土さんに、してあげられること……っ、ありますか……」


苦しくて気持ち良くて、ボヤけた視界に入った島川の顔が、自分だけの物にしたいと、手に入れたいと思った。


「…っ、はっ、『おはよう』って、言っ…て……っ」

「……え?」

「朝にっ…、俺に、おはようって……」


ボヤけた中でも、お前が笑顔になったのが分かった。



「…言いますっ、絶対っ……」


「島川っ……!」

「安土さん………!」




果てた時にお互い息が切れて、包む様にキツく抱き締められた時、酷く涙が出そうになった。


ああ、このまま溶け合う事が出来たら。

このまま一緒にいることが出来たなら。




――おはよう、と俺に毎日言って……。







「………ふふっ」


片付けられて、まるで何も無かったかの様に綺麗な部屋。

ただあの出来事を忘れさせない鈍い痛みが、まだ自分の身体にあった。



アイツと、島川と触れていたのは、嘘でも幻想でもない。




―――なのに、



安土さんへ

痛い思いをさせてしまい、すみません。
さっき彼女からメールがきてました。また、ヨリ戻せそうです。

軽蔑しないで、とは言いませんが、出来れば今までみたいに付き合ってくれたら嬉しいです。

島川








「嘘つきヤロー」


『絶対』まで付けて約束したくせに。約束を必ず守る、バカがつくほど真面目なくせに。




ああ、一度でいいから

お前に「おはよう」と言って欲しかった。























Say goodmorning.

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