短編小説
Can't see you.
近付きたいのに、いつも三歩後ろでずっと見つめていた。
触れてはいけないと、知っていたから。
触れてはいけないと、分かっていたから。
微笑まれても、何もないフリをして。
“好き”を隠して笑っていた。
全てさらけ出したいのに、いつも飲み込んで消していた。
伝えたら終わると、知っていたから。
伝えたら消えると、分かっていたから。
話していても、感情を表に出さない様に仮面を被って。
“好き”はいつも、体を駆け巡っては消えていた。
本当はいつも隣に居たいのに、いつも距離は離れていた。
隣には君の大切な人がいると、知っていたから。
隣には自分の居場所なんてないと、分かっていたから。
どんなに願っても叶わないことは知っていたから。
どんなに伝えたくても伝わらないことは分かっていたから。
数えきれない程、“好き”の言葉は体を駆け巡り、何度も何度も目を瞑った。
いつか君の横にいるのが、自分であります様に、と願って。
Can't see you.
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