キミのトナリ E ウソだ。 本当は、寂しくて、悲しくて辛くて苦しくて……。 誰か憎めばいいのかとも思ったけど、それも無理で。 ここから出たい、両親と離れたい。 そうなるにはあと何年我慢すればいいのか、何となく考えたりして、小さな希望を見つけて自分を保つ努力をした。 母と顔を合わせたくなくて、ほぼ自分の部屋に篭もる毎日。 ここに居れば普通の家族ではないけれど、学校には行かせてもらえるし、生活の面倒はみてもらえる。 もしかしたら施設に入れられるより、ずっと自由かもしれない。 本心を閉じ込めるように布団を頭からスッポリ被って身体をギューと自分を抱きしめるように小さく丸まり、ドス黒い感情が通り過ぎるのをひたすら待った。 苦しくて感情を抑え込もうと必死に力が入り、腕に爪をたてて深く爪が刺さった。 たまに血が出るけど、不思議と痛みは感じなくて、むしろスーッと気持ちが楽になる気がした。 気が付くと朝で、自分で隠すように手当てをして登校する。 そんな僕の姿を見ると、夏樹は悲しそうな瞳をして怒っていた。 母からの悪質な攻撃にも、夏樹だけが全く動じずに、僕をしっかり見てくれて、認めてくれる唯一の人だった。 夏樹がいなかったら、僕はもう生きてはいないんだろう。 この頃から、本当に大切な存在だ。 そのうち父も母も全く家に帰らなくなり、僕は完全に独り暮らしになった。 偶然街で知らない女の人と歩く父の姿を見た時、帰って来ない理由が分かった。 僕が見たことない父の笑顔を初めて見た時、本当に悲しかった。 きっと母にも違う生活があるんだろう。 家族なのに、僕は全く2人の事は知らなかった。 どこで働いているのかも、何の仕事をしているのかも全く知らないんだ。 僕のせいで、父と母の関係も崩してしまったんだ。 僕だって、望んでココに来たんじゃないのに。 [前へ][次へ] [戻る] |