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キミのトナリ
B
−朔弥 Side−

『今日は図書館へ行ってきます。』

そう昼前に柊からメールが来た。
現在午後2時すぎ。
アイツ、また昼メシ食ってねーんだろうな。
柊はほっとくと平気で飯を抜くことが最近判明した。
だからあんな細くてちっこいんだよ!ったく。
メールと電話だけの日々が続いてもう6日目、俺のイライラは限界で今にもブチ切れそうだ。
けど、ここでキレるわけにはいかない。
何故なら、ここは俺の未来の就職先だからだ。

「アアー!柊が足らねぇー!!」

椅子に座ったまま背中を反らして、ガシガシと頭を掻き毟っていると、雑誌を丸めたやつで頭に一発くらった。

「ウッセェー!ガキ。とっととソレ終わらせろ!!」

無表情のまま咥えタバコで俺を殴る俺の雇い主、霧島 隆哉。8歳上の俺の兄貴。
親父が早死した我が家では、父親変わりでもあるわけで、そのせいかどんなに逆らおうと試みても1度も兄貴に勝てた事がない。
だから、認めてないわけじゃねぇけど…。
無愛想なクセして外面は良いから上手く立ち回ってるし、要領良いし、頭もキレる。
俺以上に何でもこなせる兄にはそれなりに感謝もしているし、尊敬もしている。
だが、この状況は俺の許容の範囲を超えている。

「ったく、何日監禁するつもりだ?」

夏休みが始まってから6日間、俺は買出し以外家に帰る事も許されず、柊にメールする事すらままならない程の忙しい雑務を『社長』から与えられている。
にも関わらずあくまでこれは手伝いであり、給料という名の金銭は発生しない。
これじゃあ、どっか他の事務所でバイトした方がよっぽどマシだ!

「それ、1時間以内で終わらせたら帰っていい。」

俺の座るデスクの上に、山積みになった資料や図面のファイルがさらに積み上げられる。
この中から指示されたモノを探しすのが俺に与えられた仕事だった。
年度ごとには分類されていても、分類分けされていないため、その中から探し当てるのにはかなり困難な作業だ。
いい加減ムカついて、ファイルの整理を始めると次から次へとファイルやら書類が積み上げられる。
それに反論する暇も惜しみ、早く柊に会うため早く手を動かした。
作業は何とか時間内に終了して、ようやく苦痛な日々から開放された。

「ほら、これで柊ちゃんと楽しめ。」

「どうも。」

帰り際に、俺の労働に対しての給料なのか兄貴からの小遣いなのか分からない金額をもらい、足早に兄の会社を後にした。
すぐに携帯を取り出して柊にコールしながら駅までの道を走った。

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