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キミのトナリ
A
僕がこんなにも不安になるのは、先週ある現場を目撃してしまったからなのかもしれない。


それは…

朔弥と女の子がキスしてるところ。



その日、昼休み夏樹と過ごして教室に戻ると誰もいなくて、いつもの騒がしさがなかった。
次の時間が体育だったこともあってきっとみんな早めにお昼を済ませて移動したのだろう。
もう朔弥も本田くんと一緒に行ってるかもしれない。僕も急いで後を追いかけたんだ。
体育館にも朔弥の姿がなくて、なんとなく隣のテラスを覗いたら、そこに朔弥と知らない綺麗な女の子がいて…キスしてたんだ。


何が何だか分からなかった。
ついこの前好きだって言ってくれた朔弥がどうして?スーッと身体が冷えてく感じがして、頭が真っ白になってその場から動けなかった。
そのまま固まってる僕に気付いて、その女の子は笑ったんだ…。
まるで『朔弥は私のモノ』って言ってるみたいに。

僕はその場から逃げるように体育館へ入って…それからの事はあまり覚えてない。
その時朔弥は僕に気付いてなかったみたいで、もちろん僕から聞く勇気なんてないから何も聞いていない。
憶病者の僕は、その女の子からも、朔弥からも逃げているんだ。
自分でも分かってる。
分かっているけど、でもなぜかそっちの方が現実的に思えて、もし朔弥の口からそれを告げられたら、僕は生きていけないとさえ思っているから、真実を明かすのが怖くて堪らない。
朔弥を失う…考えるだけで怖くて身体が震えてきて、何度も嘘だって自分に言い聞かせながら、なんとか朔弥との時間を過ごした。

僕が何も言わなければ、僕はこのまま朔弥と一緒にいられるんだ。



「最近お前ヘン!」

「…え?」

でも、どう頑張っても夏樹にはすぐバレてしまった。

「お前、俺に隠し事出来ると思ってんの?」

ジーっと真っ直ぐ見つめてくる強い視線に耐えかね、それから逃げるように俯いた。
そしたら視界がどんどん歪んで見えてきて、自分でもどうしようもないくらい涙があふれ出てしまった。

「ふわぁーん!!」

「おい!どうしたんだよ!?」

突然堰を切ったように声を上げて泣き出した僕に、さすがの夏樹も慌てた様子でなだめ始めた。
夏樹が慌ててるのは僕が泣き出したからじゃなくて、たぶん声を上げて泣いたから。
今まで夏樹の前で何度か泣いた事はあっても、こんなに激しく声を上げてまで泣いた事はなかった。
しばらく泣き続けて、自分でも驚くぐらい声と、涙と、鼻水が出て、顔がグチャグチャで、それを見て夏樹に爆笑された。
それでなんとか僕の気持ちも落ち着いて来て、やっと涙を止められたんだ。



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