キミのトナリ
不安
―柊 side―
握られた手が温かいもの、抱きしめられるとこんなにも落ち着く事も、僕は知らなかったんだ。
僕にはそうしてもらった記憶がないから…。
だから、本当はコワイ…。
何でかな?朔弥とこうして両想いになれたのに、怖くてたまらない。
朔弥はすごくカッコ良くてモテるから、僕なんかいつ飽きられてもおかしくないし、そのうち要らないって言われちゃうかもしれない。
その日が来るのが怖くて、僕はまだ朔弥と過ごしてる時間もこの幸せを素直に受け入れられないでいる。
片想いしてた時はこんなんじゃなかった。
ただ、嬉しくて、姿を見るだけで幸せだったのに…。
「柊?」
急に名前を呼ばれビクッとする僕の肩を抱きながら優しく微笑んでくれる。
いっぱい優しくしてもらえるのに何でこんなに不安なんだろう?
僕はいったいどうすれば、いつになれば幸せだって実感出来るのかな?
好きで好きでたまらないのに、真っ直ぐ向けられる優しさを素直に受けとれない僕はきっと変なんだ。
こんな事考えてるなんて知ったら朔弥は怒るかな?
きっと僕の事嫌いになっちゃうよね。
だから、こんな僕知られたくない。朔弥には絶対嫌われたくないんだ。
何も言えずに朔弥を見つめると、優しく笑ってそっとおでこにキスをくれる。
晴れない気持ちを知られたくなくて、僕はそのまま朔弥の胸に潜り込んだ。
そんな僕を朔弥は何も言わず、優しく包み込むようにギュッと抱き締めてくれる。
その優しさが苦しくて泣きそうになるんだ。
本当はあの時あんな事するなんて思ってなかった。
目にしている光景が信じられなくて、朔弥に裸を見られてるのも、勝手に変な声が出ちゃうのも恥ずかしくて…。
気が付いたら朔弥の姿がなくて、嫌われたんじゃないかってすごく不安になった。
まさか気を失っちゃうなんて…なんて僕はダメな奴なんだろう。
ちゃんと最後までしてないってことは僕でも分かった。
自分でも情けなくて申し訳なくて、朔弥を困らせるって分かってたけど涙が止まらなかった。
あれから朔弥とキスしたり、抱き締められたりすると不安がどんどん膨らんで、張り裂けそうになるんだ。
触れ合う度に目の前の朔弥がまるで別人のような気がして…。少なくともあの時はそう感じた。
まだ朔弥が僕と同じ気持ちだって実感がわかない。
僕は望んだ幸せを手に入れたはずなのに、なぜかそれ以上に不安を感じてしまうんだ。
家で一人になると一気に不安が襲って来て、そのままドロドロした気持ちを抱えながら眠りに落ちて、恐怖心に襲われ何度も目が覚る。
日に日にその塊が大きくなるのを感じながらも僕は誰にも気付かれないようにしていた。
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