キミのトナリ
C
「先生、柊は?」
「まだ眠ってるわ。心配しなくても大丈夫よ。私職員室まで行ってくるからちょっとお願いね。」
心配しないわけねぇよ。こんな弱ってんの見といて。白いカーテンを開けるとまだ柊は青白い顔をしてベットで眠っていた。
俺はベットの横にある丸い椅子に座ってしばらく柊の様子を伺っていた。
「…クヤ……ハァ…ハァ…サ…ヤ」
今まで死んだ様に静かに眠っていた柊が急に苦しそうに呼吸をしだした。
はっきりと聞き取れないが確かに俺の名前を呼んだのが分かった。
「おい。大丈夫かよ?柊!起きろっ!柊。」
体を揺すってみても全く起きる気配がなく、んーんーと眉間にシワをよせて苦しそうにするばかりだった。
目が覚めるのを待つしかないか。なんだかこっちまで苦しくなる…。いったいコイツに何があったんだよ。何抱えてんだよ。
そういえば、家がどうとかって夏樹が言ってたな。
「複雑な家庭」ってやつなのか?お互い家族の事なんてあんまし話さなかったし、どんな家庭で育ったとか家族構成さえも知らない。
「…サクヤ…サク…」
「俺はここだぞ!早く目覚ませよ。」
どんな夢見て俺を呼んでんだよ?
どうしてやることも出来ない自分にいら立ちを覚えた。
「ハァ…。」
ベットに両肘をつき、頭を抱えて俯き、深い溜め息を吐き出した。
「…とお…さん…。」
ハッとして顔をあげると柊の瞳からつうっと一筋の涙が流れた。
それを見た瞬間…。
俺の中で柊に対する今までとはまるで違う新たな想いが生まれたのをはっきりと感じた…。
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