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キミのトナリ
H
真っ暗な闇の中を僕は一人必死に走っている。


何かから逃げてるのか、それとも追い掛けてるのか…。
理由も分からぬままとにかく全力で走る。




疲れて立ち止まると、目の前には笑顔の朔弥と知らない女の子が腕を組んで楽しそうに歩いている。


僕はそこで自分が走り続けていた理由がようやく分かった。




『朔弥を誰にも奪われたくない。』




本当は隣の女の子の様に腕を組んで朔弥の隣を歩きたい。もっともっと近付いて
朔弥のトクベツになりたい。


もうこれほどまでに朔弥への想いが膨らみ過ぎて抑えるなんて出来ない。


「サクヤ…サクヤ…」

何度も名前を叫ぶけど全く届かない。
それでも名前を呼びながら前を歩く二人に追い付き朔弥の肩を後ろから掴んだ。

ゆっくりと僕に振り向く顔を見ると…。

朔弥じゃない…。

さっきまで確かに想いを寄せる相手だったはずなのに今目の前にいるのは、最後に見たスーツ姿の父親だった。


なんで?なんで父さんが出て来るの?今まで一度も出てきた事なかったのに。
父さんへ伸びた僕の腕は力無くダランと落ちる。
すると父さんは何も言わずに隣の女の子とまた腕を組んで歩きだした。


父さんは夢の中でも僕には何も言ってはくれないんだね。
でもいいんだ。
僕にはもう親はいらない。

「…サクヤ…サクヤ」

なぜだか急に朔弥に会いたくなってさっきよりも必死に泣きながら朔弥を呼ぶ。
会いたくて、会いたくて。きっとあの優しい笑顔を見るだけで救われる。そんな気がした。


「…ュ…おい、柊!」

いきなり体を大きく揺すられ、ビクッと起き上がるとそこには…

「大丈夫か?お前すげーうなされてたぞ。」

待ちわびた想い人が横にいた。

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