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キミのトナリ
C
記憶にないくらい幼い頃は、僕はまだ両親と3人で暮らしていたらしい。

父の実家は会社を経営していた。
家業を継がず好きな仕事に就きたいと宣言し、父は大学入学と同時に家を出た。
陰で祖母の援助を受けながら大学生活を送り、母と出会って、僕を妊娠し2人は学生結婚をした。
跡継ぎがいないと悲観していた頃、僕が産まれたことで、祖父は僕を跡取りに育てるため、まだ就職前の経済的にも精神的にも未熟で、自分たちの生活すら怪しい。
そうあれこれ理由を並べて、両親から僕を引き離した。
祖母が亡くなる数日前に、突然聞かされた話。

僕の記憶している祖父は、大きなお腹をした意地悪な人だった。
いつも厳しい顔で僕を見て、大きな声で怒鳴ったり、叩かれたこともあった。
正直あまり好きではなかった。
反対に祖母は、厳しくしつけられらけど、褒めてもくれたし、いろいろなことを教えてくれて、楽しいと思える時間を過ごせたので僕は大好きだった。

数年後、祖父が事業に失敗して会社が倒産し、それをきっかけに祖父は体調を崩して入院。
1ヶ月も経たないうちに亡くなってしまった。
僕が今までの経緯を知ったのは、子供ながらに今までとは違う生活の変化を感じた頃だった。

「本当はね、あななにはちゃんとお父さんもお母さんもいるのよ。でも、…私たちのワガママのせいであなたを不幸にしてしまって…本当にごめんなさいね。だから、お父さんとお母さんを恨まないでね。悪いのは全部私なんだよ。」

祖父を亡くし、憔悴しきった祖母の口から真実を聞き、僕は喜んで良いのか、それとも恨んでいいのか分からなかった。
話を聞くまで、僕には両親がいるなんて考えた事もなかったし、祖父母には可愛がってもらっていたので何一つ不満なんてなかったんだ。
だから祖母と一緒に二人でこれからも生きて行こうと、元気のない祖母を励まし続け、少しでも祖母の負担が減るように一生懸命手伝いもした。
それでも祖母は僕を置いて、祖父のもとへ行ってしまった。
警察の人が家に来て祖母が死んだと聞かされて、知らない大人達がたくさん来て、知らない場所へ連れて行かれて…。

「今日から御両親と暮らすんだよ。」

そう言われた。


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