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キミのトナリ
I
それからお母さんが、僕と出会う前の朔弥の話をたくさんしてくれた。
小さい頃から何でも出来て、あまり感情を表に出さない子だったからか、回りの人からよく誤解された事。
それから、お父さんを事故で亡くした時、1人でこっそり泣いていたことも。
きっと朔弥は誰かに弱い所を見せたくなかったのかな?
今の朔弥しか僕は知らないけど、何となくそんな気がする。
僕の知ってる朔弥は、僕の知らない苦しみを知ってるんだ。
さっきまで、遠く感じていた朔弥との距離が、少し縮まったように思えた。

「柊ちゃん、ありがとう。」

「…えっ?」

「朔弥のこと好きになってくれてありがとう。」

そう優しく微笑んで言われた言葉に、僕は何も言えず、声を上げて泣くことしかできなかった。
『ありがとう』って言葉が嬉しくて嬉しくて。
それは僕の方なのに。
泣いている間も、ずっと静かに抱きしめてくれたお母さんの温もりに、気持ちが少しづつ解されていく。
僕のせいでほとんど仕事が進まなかったにも関わらず、嫌な顔せずに相手をしてくれた優しさに、いつの間にか不思議と落ち着ける存在に変化していた。


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