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君と僕の想いは良く似ている


神輿's request No.[エドマシュ]
君と僕の想いは良く似ている

 ジェフと名乗る男を見た瞬間に、マッシュは理解した。知られてはいけない事情があるのだろう、間違いなく自分の兄であると。
 10年経って、姿形は見分けられる程に違いを出した。世界が崩壊して再開したジェフと名乗る男の姿は、髪の色を鈍色に染めているが紛れもなくエドガーそのものだ。
 セリスは納得の行かない顔をしていたが、それも致し方が無い。マッシュは一人追いかけて酒場へと入った。酒気が立ち込める路地裏の酒場で、彼の姿はあった。
 マッシュを見やって、ジェフはにやりと薄い唇を歪める。

「なんだ、俺を追って来たのか」

 ジェフの挑発に乗らず、マッシュは無言で親指を自分の後ろにある階段を指し示した。浮浪者、荒くれ者がたむろする酒場でも、マッシュは揺るぐ事など何もない。
 彼の体躯はならず者に負けるほどではないからだ。
 いいだろう、とジェフはマッシュと共に階段を上る。ジェフに用意されていた部屋は汚い酒場でも大分ましな作りをしていた。

「それで、俺に何か用だったのか」

 薄く笑うジェフの唇からは酒気が零れている。酔っているのだろう、顔色は平然としているが深酒である事が窺い知れた。

「お前じゃない、兄貴に用事があるんだよ」

 同じ人物を指して、マッシュは事もなげに言う。ジェフとエドガーは外側が同じ人物であっても、マッシュの中では別の人物なのだ。

「だから、兄貴と話をさせてくれ」
「…いやだね」

 静かに向けられたのは、拒絶の言葉。
 そして、肯定を指し示す言葉だ。暗にジェフは認めたのだ、自らがエドガーで在る事を。

「俺が、エドガーだとしてもこう言うさ。兄貴として見てるうちは、お前と話す事なんてないってな」
「…それが、兄貴の答えなのか?」

 マッシュは遠くを見る様に、ジェフの瞳にある最奥を見ようとする。目の色は鈍色のようにくすんで、元々のサファイアブルーは見えようもない。
 壁に掌底が当たる。薄い壁が簡単に揺れた。マッシュの首を掠めた掌底は、そのまま腕の鎖となってマッシュを逃がそうとしない。

「兄貴じゃなきゃ、話す事はない」

 振り払おうとマッシュがジェフの腕を避けようとすると、少し俯かせたジェフの顔から視線が突き刺さる。そこで、マッシュは手を止めた。

「お前が、悪い」

 何が、とマッシュは問わなかった。全て理解して離れたはずだからこそ、問わない。

「ロニとしての、俺は、いつまでもお前に見て貰えない」

 涙の代わりに、零れ落ちる言葉。

(そうじゃないよ、兄貴)

 マッシュの言葉は口に出す前にジェフの指関節で塞がれた。舌の上に、ジェフの指関節がさらりと撫でる。

「弟じゃない、俺もエドガーじゃない。それでも手に入らないなら、俺はどうすればいい」

 近づいてきたマッシュの指先を、ジェフは噛んで小さく傷を残した。傷跡は残る。
 指先から零れた赤は、涙の色だった。



リクエスト RT user 神輿様


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