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星達へのレクイエム(深海魚シリーズ)




冬の日没は早い。
授業が終わる頃には日はすっかり沈みかけてしまう。
その分長く空を占拠する夜には、多くの星が瞬く。
存外、自分もロマンチストなのだなと思って笑った。

三学期を迎え、部活もそこそこの練習だけになり、それでも帰る頃には真っ暗になってしまう。
寒いし早く帰れば良いものを、と思うけれど、やはり彼と少しでも関わりたくて。



「一々待っていなくとも良いものを、」
「俺は元就サンに会いたいんだよ、だから別に気にならない」



施錠と消灯を確認する役目にある彼は、いつだって一番最後に校舎を出て来る。
二重に巻いたマフラーから少しだけ覗く顔が特にcuteで。
寒がりな彼に、あったかい緑茶の缶を差し出すのもいつものこと。



「クラスも部活も違ったらさ、今しかchanceがないんだ、understand?」
「しかしこの寒い中を待っているのも辛かろう、」
「もう慣れた」



これは嘘じゃない。
実家は雪国だし、寒さには慣れている。
何より、



「元就サンと一緒なら、寒くない」
「そうか、我は寒い」
「じゃあ明日からhug付きにしないとな」
「阿呆め」



いくら近寄っても、一定の距離から先には進めない。
入らせてはもらえない。
彼を縛り付けているのが、誰なのかもまだ、分からない。

それでも自分という存在を、少しでも刻みたくて、
明日もまた彼を待つのだろう。








あきゅろす。
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