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降り続け 雨よ




中国から適度に長い船旅の末、奥州に着いた時には雨が降りだしていた。
すっかり梅雨も明けたから会いに来いと文にあったから、わざわざ足を運んだのに富んだ出任だ。
そう思いながら、元就は出迎えに来た使者‐小十郎を少しだけ睨み付けておいた。



「伊達はどうした、」
「政宗様は体調が優れぬ故、城にて伏せって居られますれば。無礼は百も承知、お咎めはこの片倉が引き受けまする」
「…そうか、失礼した。丁重な出迎え、恐悦至極に存ずるぞ片倉、」



面倒だから出迎えは部下に任せた、などと言う理由ならば迷わず小十郎を斬って捨てる処だった。
正当な理由があるならば仕方有るまい。
けれど体調が優れぬ、というのは些か、頃合いを外したような気がしてならなかった。


具合が悪い、となれば今日の処は会わない方が相手の為だろうと思っていたが、城に着いた途端に政宗が面会したいと我儘を言っているいう旨を小十郎に伝えられた。
別に元就としては構わないが、政宗の体調は気に掛かる。
大丈夫なのかと問うと、持病のようなものですからと笑って返された。
心配した分、損した気になった。



「伊達、」
「元就サン…!」



通された部屋で蒲団に伏せって居た政宗は、元就を見るなり嬉しそうに笑った。
但、政宗特有の何時もの覇気はない。
気に障らぬ様に、そ、と枕元に膝を付く。



「sorry,折角来てもらったのにこの様だ、情けねえ」
「よい、だが大丈夫なのか、別に我など放っておいても構わぬのだぞ、少しでも休んだ方が…」
「No problem,只のheadacheだ、寝てたら問題ない」
「へで…?」
「Ahー…頭痛、」



政宗の話す南蛮語は理解し難い。
訂正してもらって漸く、理解できるのだがそれなら最初から普通に話せば良いものを、といつも思う。



「雨の日はいつもこうなんだ、けど今日に限って半端なく痛むから参った、折角元就サンが来てくれたのに」
「気にするな、しかし雨の度にこれでは辛かろう?」
「もう慣れたさ」



その割には辛そうで、変に強がるなどまだ子供だなと。
やはり大人しく静養させた方が良いだろうと元就は判断し、適当な理由を述べて退室しようとした。
けどそれを制するように政宗が元就の袖を掴んだ。



「stay here,」



さっぱり意味は判らないが、ここにいろという意味合いなのだろうと汲み取り。
それが当人の意志ならば、と元就は立ち上がり掛けた腰を再びそっと下ろした。
辛そうだが満足気に政宗は笑う。



「我がここに居ても、何にもならぬぞ、」
「isn't it,何よりの特効薬だ」



無理矢理に膝枕をさせ、幸せそうに政宗は目を閉じた。
こんな固い腿では寝難かろうと元就は思いながら、早く治まるようにとそっと政宗の頭を撫でる。

そうして奥州での一日目は過ぎていった。










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