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仙流復活祭
春一番!(5)
食事をして、いつもの様にバスケをする。
それから仙道は、シャワーの後、海に出ようと流川を誘った。


早春の海は、たまたま今は遠目に散歩をする人や犬がちらほら見える程度だ。
海を眺めて遠い目をする仙道に、流川は視線を向けた。
すると彼はポツリと言った。

「三年生、卒業しちまったなー……」
高校バスケは一年一年で戦力が変わる。
今年はちっとシンドイか…なんて思いはしたが、それは毎度の事かと溜め息をつく。

「何だ…また余計な事でも考えてんのか」

余計な事と言われて仙道は苦笑する。
「そりゃ考えんだろ、インハイまではバスケ一筋で良いけど、その後とかな」

「……アンタもインハイで引退すんのか」
何処か淋しそうな目をしていると思うのは気の所為だろうか。

「まぁなー……そうなるだろうな」
むうっと黙り込む流川に、仙道は笑った。
「おめぇとの1オンはやめねーから心配すんな」

ふと流川は、仙道は何を目指してるんだろうと思った。
場合によっては離れ離れにもなり得る自分達なのだ。
そうして流川が徐に訊いた。

「───アンタは…アメリカに行く気ねーのか?」

仙道は流川の顔を見て答えた。
「今のトコロねぇな……何だ、オレをアメリカ行かせてーのか?」
茶化すみたいに付け足されてムッとするも、ここは真剣に続ける。

「アンタ一人がどんだけ強くても、チームが強くなきゃ勝てねー。アンタだって解ってる筈だろ」

勿論彼は強いチームを基準に言っている。
流川の真剣な瞳に魅入られたみたいに、仙道は見つめ返した。

「アンタはそれなりにベストは尽くしてきたんだろーけど、アンタの100%引き出せる味方と敵が揃ってねー。オレはその100%のアンタを倒してーんだ」

驚いた様に見つめると、仙道はまた笑みを浮かべる。
「それがアメリカにはあるって?」

コクンと頷く流川から一旦目を離して、彼は暫く海を見ていた。
流川はそんな彼を見つめている。


「───オレな、大学行くつもりだ。そこな、結構アメリカの大学と交流あるんだぜ。練習試合も出来る。そこで満足するか先に行きてーと思うかは、そん時決めたら良いと思ってる」
「…………」

仙道がそう決めているなら、もう何も言えない。
黙り込む流川に、仙道が逆に訊いてきた。

「おまえさ、アメリカに行きてーのは何でだ?」
「強くなりてー」

即答する流川に仙道は続ける。
「アメリカに拘りがあるんじゃねーのか?」
「拘り?」
「どーしてもアメリカじゃなきゃヤダって事」

「それは…日本とはレベルがちげーから」
質問の意味を疑問に思いながら答えると、仙道が更に言った。

「要は強くなる為の手段の一つって事だろ」

すると流川は黙って仙道を見つめた。
仙道は少し間を置いてから続ける。

「全国でたった5人のスタメンに入って、アメリカを倒すって目標もアリなんじゃねーの?当然向こうとやり合う経験は必要になるけどな。だけど、おめぇがNBAに入る事が夢だってんなら、止めねーよ。オレ達が離れ離れになるからって左右させる問題じゃねぇ」

目を見開いて聞いていた流川は、それから目を伏せた。

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